ケリー・アン、BBCニュース
日本の国会は16日、性犯罪の規定を大きく見直す刑法改正案を可決、成立させた。レイプの定義を改め、性交同意年齢を引き上げた。
これまでレイプは「強制性交」とされていたが、「不同意性交」に範囲が広げられた。これにより、日本のレイプの法的定義は諸外国とそろった。罪名は「不同意性交罪」に変更された。
従来の法律は、同意なく性行為に追い込まれた人を保護せず、被害を届け出にくくしていると批判されていた。
また、裁判所の判決にばらつきを生んでいるとし、改正を求める声が高まっていた。
改正案はこの日の参院本会議で可決された。性交に「同意しない意思を形成、表明、全うすることのいずれか」が難しい状態として、8項目の具体的な行為を明示している。
これには、暴行や脅迫に加え、アルコールや薬物を摂取させること、恐怖・驚愕(きょうがく)させること、地位関係性による不利益を憂慮させることなどが含まれる。
性交同意年齢は16歳に
性交同意年齢については、先進国の中で最も低い13歳から16歳に引き上げられた。ただし、13~15歳と性行為をした人は、相手より5歳以上年上の場合に限り処罰対象となる。
性交同意年齢の変更は、1907年に定められてから初めて。
一方、レイプ(不同意性交罪)の公訴時効は10年から15年に延長され、被害を届け出るまでにより多くの時間をもてるようにする。
このほか、同意なく性的搾取を目的とした写真やビデオを撮影することを取り締まる「性的姿態撮影罪」も新たに成立した。
日本では2019年、性犯罪で起訴された被告人に対する裁判所の無罪判決が1カ月で4件も相次ぎ、世間の怒りを買った。そうしたことを背景に、性犯罪に厳しく臨もうと刑法改正が検討されてきた。
2019年には、性暴力に抗議する「フラワーデモ」が各地で始まった。
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不十分との批判も
性犯罪の問題に取り組んできた人たちの一部は、今回の法改正について、問題の一部にしか対処していないとBBCに話した。
人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」(東京)副理事長の伊藤和子弁護士は、何世代にもわたって浸透してきた、性交と同意に関する「ゆがんだ考え」に対処する必要があると訴える。
性暴力のサバイバーが被害を公表すると、オンラインで脅迫や中傷を受けることがよくある。法律が改正されても、サバイバーに被害を届け出る勇気が必要になるのは変わらないと、活動家らは指摘している。
日本では、性暴力をめぐるスティグマ(らく印)と恥ずかしさから、サバイバーが被害を訴えるのをためらうことが多い。2021年の政府調査では、被害にあった男女の約6%しか届けを出していなかった。また、調査対象となった女性の半分は、「恥ずかしさ」から届け出はできないと感じていると答えた。
「今回の規範を社会に根付かせるには、全国的な学びと教育の取り組みが不可欠だ。性暴力を防ぎ、おとがめなしの文化を終わらせるには、その方法しかない」と伊藤氏は言う。
弁護士で人権活動家の上谷さくら氏は、性暴力サバイバーに対する経済的・心理的支援をもっと充実させるべきだとBBCに話した。
また、加害者も再犯防止のための支援を受けるべきだと付け加えた。
<解説> 同意をめぐる日本での闘い――テッサ・ウォン、BBCニュース
今回の法改正で最も重要なのは、レイプを「強制性交」から「不同意性交」に定義し直したことだ。「同意」の概念の理解がまだ乏しい社会で、事実上、同意の法的範囲を示した。
活動家たちは、日本の従来の法律が、狭い定義によって正義の実現に極めて高いハードルを設定し、サバイバーに被害の訴えをためらわせてきたと指摘している。
例えば、2014年に東京で起きた事件では、男性が15歳の少女を壁に押し付け、少女が抵抗している間に性交に及んだ。裁判所は、男の行動が被害者の「抵抗を著しく困難にする程度」ではなかったとして、無罪判決を言い渡した。当時の性的同意年齢により、少女は成人として扱われた。
性暴力被害当事者らの団体である一般社団法人Springの田所由羽さんは、「(裁判での)実際の判断には、事件によってばらつきがある。同意がなかったと認められても(中略)暴行や脅迫が認められなければ、無罪となることもあった」と話す。
また、この法改正は問題の一部にしか向き合っていないと、活動家たちは言う。改革を求める声は、司法の枠を超えて広がっている。
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