【ワシントン=高見浩輔】米国の新たな歳出・歳入法が16日、成立した。同日午後にホワイトハウスで署名したバイデン米大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。修正前の原案では歳出規模が10年で約4370億ドルで、企業への課税強化などにより約7370億ドルの歳入を見込む。公約としていた気候変動対策が盛り込まれ、11月に中間選挙を迎えるバイデン政権には追い風となる。
今回の法案は21年末にバイデン政権の看板政策だった「ビルド・バック・ベター」と呼ぶ大型歳出・歳入法案に反対した民主党のマンチン議員が、民主党上院トップのシューマー院内総務と7月27日に合意して具体化した。上院・下院を通過して成立するまで3週間のスピード決着だった。
バイデン氏は16日、夏季休暇中のサウスカロライナ州からワシントンに戻って署名をした。満面の笑みを浮かべて「富裕層や大企業がようやく公正な負担の一部を(税金として)支払うようになり、政府の債務は削減されてインフレが抑制される」と話した。
歳出の大半は再生可能エネルギーの推進など気候変動対策だ。歳入は納税額が利益の15%を下回る大企業に対する課税強化や徴税当局の機能強化などが柱。医療保険に対する補助金の延長や薬価の引き下げにつながる価格交渉の改革も盛り込まれた。上院通過前に投資利益を巡る課税案の一部が除かれ、自社株買いに対する1%の課税が追加された。修正後の歳出・歳入額は後日公表される。
新型コロナウイルス禍を受けて21年3月に成立した米国救済計画法は1.9兆ドルの巨額財政支出が22年に物価高を招いたと野党・共和党などから批判されている。今回の法案は名称を「インフレ抑制法案」とし、課税強化によって米経済の総需要を減らす内容だと主張している。
ただペンシルベニア大などの試算では25年ごろまでは財政支出と課税強化の効果が拮抗する。専門家の間ではインフレを抑制したり、経済成長を後押ししたりする効果は当面ないという指摘が多い。
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