東京都議選で自公両党による過半数獲得を逸した自民党は、次期衆院選を前に厳しい民意を突きつけられ、党内には危機感が広がった。菅義偉（すが・よしひで）首相（自民党総裁）は５日、面会した下村博文政調会長に厳しい結果だとの認識を示した。一方、選挙戦を終盤で巻き返した小池百合子都知事は早々に動きだし、自民には警戒感が強まっている。
「自公で過半数を実現できなかったことは謙虚に受け止めたい」。首相は５日、官邸で記者団に都議選の結果についてこう語った。
都議選で自民は３３議席を獲得して第一党に返り咲いたものの、民主党による政権交代を許した平成２１年都議選の３８議席よりも少ない。幹事長経験者は「大敗だ」と明言し、新型コロナウイルスのワクチン接種状況に対する批判が大きな原因だとの認識を示した。
自民は７つある１人区のうち５つで敗れた。ベテラン議員は「衆院選の選挙区も当選者は１人だ。１人区で負けたのは厳しい現状を表している」と話した。
衆院選を控え首相は「選挙の顔」として正念場を迎えている。４月の衆参３選挙で自民は不戦敗を含め全敗し、山形、千葉、静岡の各知事選では自民推薦候補が野党系候補に敗れた。８月には首相のおひざ元で横浜市長選がある。
自民では小池氏への警戒感が強まる。小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が終盤に猛追したためだ。首相を目指す小池氏が衆院選に出るとの臆測は絶えない。
その小池氏が５日、自民党本部を訪れ、昵懇（じっこん）である二階俊博幹事長と面会した。新型コロナ対応や東京五輪・パラリンピックなどをめぐり意見交換したというが、国政転出を見据えた動きではないかとの見方も広がる。記者団に国政転出について問われたが、「私はそういう意思を一度も言ったことがない」とさらりと否定してみせた。
首相は党総裁任期が満了する９月末までに衆院を解散する考えだ。ワクチン接種を進め、追加経済対策の骨格を示したうえで、東京大会成功の余勢を駆って衆院選に挑むというのが基本戦略だが、その通りいくか、ますます見通せなくなった。
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