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Thursday, March 19, 2020

ドコモの5G戦略を読み解く ネットワーク、料金、端末の特徴は? - ITmedia

 NTTドコモが、5Gの商用サービスを3月25日に開始する。同時に発売される端末は、シャープ製の「AQUOS R5G」とサムスン電子製の「Galaxy S20 5G」。4月には、ソニーモバイル製の「Xperia 1 II」やLGエレクトロニクス製の「LG V60 ThinQ 5G」もラインアップに加わる予定だ。先行して5Gの商用化を発表したソフトバンクとは異なり、ドコモはミリ波対応の端末も用意する。

 ネットワークについては、5G用に割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を活用する方針。2年後の2022年3月末までに、2万局を達成する方針を打ち出している。注目を集めていた料金プランについては、「当面の間、無制限」を打ち出した。正式な料金プラン化は、様子を見て検討するという。ここでは、ドコモの5G戦略をネットワーク、料金、端末の観点で読み解いていきたい。

ドコモ ドコモは3月25日に5Gの商用サービスを開始する

3月25日に500局からスタート、基盤展開率重視で2年後の2万局を目指す

 エリアというより、スポット――これが、5Gの基地局が設置された場所の一覧を見たときの率直な印象だ。先行して5Gの商用化を発表したソフトバンクと同様、ドコモの5Gも当初は限定的な場所でしか利用することができない。3月25日時点での基地局数は、150カ所、500局だという。また、3月時点ではミリ波のサービスも始まっていない。

 東京五輪の開催が予定されている(今のところ、だが)7月を前に、47都道府県全てに5Gの基地局を設置。1年後の2021年3月末までには、1万局にこれを拡大する。これが、2年後の3月末には2万局になり、基盤展開率97%を達成する予定だ。基盤展開率とは、総務省の定めた基準で、日本を10?四方のメッシュに分けた約4500の区画に対する割合。2万局で、4365区画に5Gの基地局を設置すれば97%を満たすことができる。

ドコモ 新たな周波数を使った基地局を、2022年3月末までに2万局展開する予定
ドコモ 2万局達成時の基盤展開率は、97%になる見込みだ

 ソフトバンクは従来通りの人口カバー率を重視し、4G周波数の5G転用をにらんでいるのに対し、ドコモは基盤展開率を高めていく方針。2万局も全て、5G用として割り当てられている新しい周波数帯の基地局になる。ドコモの吉澤和弘社長は、「基盤展開率を高めることが最も重要だと考えている」と語る。ここまで数字が上がれば、「実質的に日本全土をカバーしていることになる」(同)というのが、ドコモの考えだ。

ドコモ 5G開始の意気込みを語る吉澤社長。写真はオンライン会見のスクリーンショット

 既存の4G用周波数を転用することに対しては、やや消極的だ。ネットワーク部 技術企画担当部長の中南直樹氏によると、その理由はスループットにあるという。中南氏は「既存の周波数を5G化しても、速度が上がらない。今後のサービスを考慮しながら、展開も含めていつごろやるのかを検討したいが、まずは新周波数で1万、2万と(基地局を)打っていきたい」と語る。

 確かに5Gが超高速・大容量なのは、新しい周波数で、帯域幅を広く取れるからだ。帯域に限りがある既存の周波数を5Gにしたところで、スループットが大きく向上するわけではない。エリアを広く取って端末上に「5G」のアイコンが表示されても、速度が伴っていなければ「なんちゃって5G」になってしまうというわけだ。

ドコモ 5Gの特性を生かす重要性を語ったドコモの中南氏
ドコモ 高速通信が特徴の5Gだが、その実力を引き出すには帯域幅が必要になる

 ある意味、ソフトバンクとは真逆の方針だが、デメリットとして、プロモーション的な観点ではエリアの広さがアピールしづらくなる。5Gの商用化で先行した米国でも、スループットを重視するVerizonやAT&Tに対し、T-Mobileが低い周波数を使ってエリアの広さを売りにしている。どちらも一長一短といえそうだが、日本でも同様に、キャリアごとに方針が分かれた格好だ。

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端末は5Gの特徴を生かせるハイエンドから、年内にはミドルレンジも

 このようなドコモの方針は、端末のラインアップにも表れているといえそうだ。ドコモは18日に「Galaxy S20+ 5G Olympic Games Edition」を含む計7機種を発表したが、全てがハイエンドモデルだ。逆の見方をすると、ミドルレンジ以下の端末は、現状では4Gのみということになる。OPPOの「Reno3 5G」を低価格モデルの目玉として用意したソフトバンクとは、対照的に見える。

ドコモ 端末は計7機種を展開。スマートフォンだけでなく、Wi-Fiルーターも発売する

 ラインアップがハイエンドに集中した理由を、ドコモのプロダクト部 プロダクト企画担当部長の渡邉正明氏は、「5Gの一番の魅力である高速・大容量を最も感じていただける端末がハイエンドになる。まずはそこを導入した」と語る。

ドコモ ラインアップの狙いを語る渡邉氏

 AQUOS R5GやGalaxy S20、S20+の8K動画撮影や、Xperia 1 IIの秒間20枚の高速連写などは、いずれもデータ容量の増加につながるため、5Gの特徴を生かすことができる。LG V60 ThinQ 5Gも、2画面スマートフォンとして、マルチアングル動画やクラウドゲームサービスに生かすことが可能だ。また、「arrows 5G」のように、ミリ波に対応したモデルについては、必然的にハイエンドモデルになる。価格を抑えるより、まずは5Gの魅力をアピールできる端末をそろえたといえる。

ドコモ 8K動画や高速連写などは、トラフィックの増加につながる可能性がある
ドコモ マルチアングルや2画面表示がしやすいLG V60 ThinQ 5Gも、5Gらしいスマートフォンといえる

 一方で、電気通信事業法の改正以降、ハイエンド端末の販売には急ブレーキがかかっている。Galaxy S20+ 5G Olympic Games Editionと富士通の「arrows 5G」は価格が未定だが、5G対応モデルはいずれも10万円を超える見込み。端末への割引が厳しく規制されている中、どこまで販売を伸ばせるかは未知数だ。こうした状況を踏まえ、ドコモは「5G WELCOME割」を用意。3Gや4Gからの機種変更で5500円を割り引く他、新規契約やMNPでは2万ポイントのdポイントを還元する。

ドコモ 5G WELCOME割に加え、スマホおかえしプログラムも改定した

 ただし、2万ポイントの還元は、端末購入補助の上限ギリギリだ。「スマホおかえしプログラム」で免除される端末価格の3分の1が、2年後の一般的な中古買い取り価格を超えた場合、ルール違反になってしまう。そこでドコモは、スマホおかえしプログラムを改定し、他社ユーザーに対象を拡大した。回線契約を必須としないことで、端末購入補助と見なされないように対策を施した。料金制度室長の田畑智也氏は、「5Gの端末は4Gに比べ、少し高くなる。より求めやすくしたいというところで、(スマホおかえしプログラムを)変更した」と狙いを話す。

ドコモ 料金や割引制度の狙いを語るドコモの田畑氏

 とはいえ、スマホをおかえしプログラムの実質価格に5G WELCOME割を加えても、実質価格で5万円を下回る端末はGalaxy S20 5Gだけで、絶対額はどうしても高くなる。ドコモは「2023年度には、スマートフォンを中心とした5Gの契約者数を、2000万規模にまで高めていきたい」(吉澤氏)という目標を掲げる。そのためには、やはり「スタンダードモデル的な、機能と価格のバランスが取れたものも重要」(渡邉氏)になる。

 そのため、ドコモはエリアの拡大をにらみつつ、「ミドルレンジモデルもなるべく早期に投入する」(同)という。渡邉氏によると、「できれば今年(2020年度)中に投入する準備を進めている」といい、秋冬モデルとして登場する可能性が高い。プロセッサも徐々にミドルレンジ化が進んでおり、QualcommのSnapdragonは2020年中に600シリーズまで5Gに対応する予定だ。

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完全無制限を実現した「5Gギガホ」、料金は500円アップに

 エリアの狭さを理由に5Gのネットワーク料金である1000円(税別、以下同)を2年間無料にしたソフトバンクに対し、ドコモは大容量プランのギガホを「5Gギガホ」に改定し、料金を500円高く設定した。代わりに、データ容量を30GBから100GBに拡大。この100GBを、キャンペーンという形で当面、容量無制限にする。金額は月額7650円だ。

ドコモ 5Gギガホでは、容量無制限のキャンペーンを展開する

 ただし、3親等以内の家族とファミリー割引のグループを3人で組めば「みんなドコモ割」で1000円引きになる他、ドコモ光とのセット割でさらに1000円が割り引かれる。期間限定だが、「5Gギガホ割」で6カ月間はここからさらに1000円安くなる。さらに、dカードで毎月の料金を支払うことで受けられる「dカードお支払割」で170円の割引があり、全て適用すると、料金は6カ月間4480円、7カ月目以降は5480円になる。細かな点では、5Gギガホからは、いわゆる2年縛りもなくなっている。

ドコモ 割引を全て適用したときの最低料金は、6カ月間4480円になる

 100GBを標準プランに据えつつ、容量無制限を打ち出したのは「ネットワーク設備等への影響を見定める必要があった」(吉澤氏)ためだ。先に述べた通り、当初は5Gのネットワークを利用できるエリアは限定的になる。ユーザーが5G端末に買い替えたとしても、ほとんどの通信が4Gのネットワーク経由になるため、キャパシティーの観点では、今と大きな変化がない。容量無制限を導入した結果、一気にトラフィックが増加すると、ネットワークに悪影響を与えてしまう恐れもある。

 容量無制限のキャンペーンに終了期間を定めていないのは、そのためだ。吉澤氏によると、「ご利用状況を踏まえながら、場合によってはキャンペーンをやめて次の対策をしたり、逆にそのままタリフ(正式な料金)化したりすることもある」と流動的だ。容量無制限はテザリングまで対象になるため、固定回線の代替として利用するユーザーが出てくる可能性もある。タリフ化を見すえつつも、石橋をたたいたというわけだ。

 一方で、5Gでも段階制のギガライトは継続した。こちらは料金を据え置きにしたが、2年縛りを撤廃した関係で、dカードお支払割をつけないと、金額は170円高くなる。4Gと同容量のプランを残したのは、「それほど容量を使わなくても、いい品質の5Gを利用したい方もいる」(田畑氏)からだという。ハイエンド端末が5G対応に置き換わっていくことを考えると、5Gをあまり意識せず、契約を切り替えるユーザーがいる可能性もある。5Gギガライトは、こうした人に向けたプランといえそうだ。

ドコモ ギガライトも5G用のものが用意される。2年縛りがないのが、4G用との差分だ

 主にギガホを強化したドコモだが、料金体系は4Gのものに近い。分かりやすい半面、吉澤氏が以前から言及していたような、サービスをバンドルした料金プランもまだ登場していない。田畑氏が「5G開始にあたり、最初の一歩の料金を出した」と語っていた通り、この料金プランはまだ始まりにすぎない。ネットワークの広がりやユーザーの拡大に合わせ、選択肢が徐々に増えていく可能性もありそうだ。

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