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Thursday, August 10, 2023

飲食店というだけで…旦過市場火災の「火元」とデマ拡散、「人生を諦めない」と夫婦で再出発 - 読売新聞オンライン

 北九州市小倉北区の 旦過たんが 市場一帯で起きた2度目の大規模火災から10日で1年となった。火災跡地に開設された仮設店舗「旦過青空市場」で飲食店を営む荒巻広行さん(75)、松美さん(55)夫婦は、インターネット上で拡散した「火元の店」というデマに苦しみながらも、周囲の励ましを支えに再出発した。(牟田口洸介、池田圭太)

 「つらい1年だったけれど、また2人でお店をできるようになったのが一番の喜び」。プレハブの青空市場の一角にある「お食事処あらまき」。台風6号の影響で臨時休業した10日、荒巻さん夫婦は翌日に向けた仕込み作業をしながら、しみじみと火災後の日々を振り返った。カウンター6席で以前の半分以下だが、新鮮な魚と旬の野菜の定食が人気を集める「新たな城」だ。

 2人は松美さんの両親が営んだ旦過市場の鮮魚店を継ぐ傍ら、京都の料亭で料理長を務めた広行さんの経験を生かし、5年前に市場で飲食店を始めた。

 定休日だった昨年8月10日夜の火災で被災。近くの自宅から駆けつけた広行さんは、消火活動を見守っている間に体調が急変し、救急搬送された。肺に穴が見つかり、緊急手術を受けた。

 ネット上では飲食店というだけで火元と決めつけられ、デマが拡散した。松美さんの携帯電話には見知らぬ番号からの着信が数十件あり、「どうしてこれほど苦しめられるのか」とふさぎ込んだ。松美さんも体調を崩し、店の再開は諦めた。

 疑いの視線を恐れ、外出もままならなかった。それでも生活のために、被災を免れた鮮魚店を火災から2か月後に開けた。「大変やったね」。デマに惑わされずに接してくれる常連客らの温かさが胸にしみた。

 広行さんが退院し、2人で鮮魚店を切り盛りしていた頃、広行さんが「料理を作りたい」とつぶやいた。その一言に、松美さんは飲食店の再開を決心した。「2人の人生を諦めたくない。支えてくれた人がいる旦過で再出発する」

 6月下旬に開店した飲食店は約15平方メートル。約600万円の出店費用を回収できるか不安もあるが、新規の客も増え、昼間はほぼ満席が続いている。松美さんは「お客さんの支えで立ち直れた。『おいしい』と喜んでもらえるよう、もうけは二の次で頑張りたい」と前を向く。

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