中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は8日、サウジアラビアの首都リヤドで同国のサルマン国王や実力者のムハンマド皇太子と会談した。原油取引拡大などエネルギー協力について協議し、両国は戦略的包括協定に署名した。人権侵害を巡る米欧の批判をはねつける方針でも一致した。
中国外務省の発表によると、習氏はサルマン国王との会談で「中国は多極化する世界でサウジは重要な力を持つとみており、サウジとの全面的戦略パートナーシップ関係の発展を非常に重視している」と述べた。サルマン国王は「対中関係の発展を非常に重視している」と語った。
サウジ国営通信によると、両国はサウジの経済改革「ビジョン2030」と中国の広域経済圏構想「一帯一路」での連携や、直接投資を広げる覚書などを交わした。サウジでの中国語教育に関する協定なども結ばれた。
伝統的に親米のサウジだが、バイデン米政権とは人権や原油の生産政策を巡ってすきま風が吹く。中国は原油や天然ガスなどエネルギー調達先としてサウジを重視しており、接近してサウジと米国の友好関係にくさびを打つ思惑がありそうだ。
習氏とムハンマド氏の会談の柱はエネルギー協力だ。習氏は「原油貿易の規模を拡大し、油田探査・開発の協力を強める」と語った。ムハンマド氏も「より多くの中国企業がサウジの工業化に積極的に関与し、重要インフラ建設やエネルギー協力事業に参加することを歓迎する」と述べた。
サウジは中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と、技術の利用に関する覚書も交わした。米国のハイテク分野では中国排除が相次いでおり、ファーウェイの通信機器は11月、他の中国IT(情報技術)大手とともに米国での輸入・販売が事実上禁じられた。
会談のもう一つの柱は、米欧の批判に対抗する姿勢で一致したこと。習氏は「中国はサウジが国家主権、安全、安定を守るのを断固支持する。サウジが国情にあった発展の道を歩むことを支持する」と述べた。「国情にあった発展」は米欧による人権や法治を巡る批判に、中国が反論で用いる常とう句だ。
中国外務省の発表によると、ムハンマド氏も「中国が過激化を取り除くための措置や努力を断固支持し、あらゆる勢力が人権を名目に中国の内政に干渉することに断固反対する」と述べた。中国がテロ対策を名目に新疆ウイグル自治区で進めた措置や香港の民主化デモ弾圧などを支持する姿勢をみせたとみられる。
ムハンマド氏は「(中国大陸と台湾が一つの国に属するという)一つの中国原則」を支持する方針も伝えた。
習氏がサウジを訪問するのは2016年1月以来、約7年ぶり。9日には中国とアラブ諸国による首脳会議や湾岸協力会議(GCC)諸国首脳との会議も予定する。
リヤドには8日、エジプトのシシ大統領やクウェートのミシャル皇太子らが会議に出席するために到着した。中国にはサウジだけでなく、GCCやアラブ諸国との連携をさらに深める狙いもありそうだ。
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