新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて、政府は入院対象を重症者や中等症のうち重症化リスクの高い患者らに限定し、自宅療養を基本とする新たな方針を打ち出した。ワクチン接種の進展を理由に「新規感染者が増えても病床は
◆医師がいくらいても追いつかない…
菅義偉首相は3日、官邸で日本医師会の中川俊男会長ら医療関係団体の代表と面会し「急激な感染拡大でも医療提供態勢を確保し、誰もが症状に応じて必要な医療を行うことができるよう方針転換した」と説明。自宅療養者の状況を、往診やオンライン診療で把握して適切な医療を提供するよう協力を求めた。
中川氏は面会後、記者団に「感染が爆発的に増えていくと、(医師が)いくらいても追いつかないことは現実になる。頑張れるだけ頑張ると言うしかない」と悲壮感を漂わせた。
◆政府・与党に楽観論がまん延
政府の唐突な方針転換は、この時期の病床逼迫に備えていなかったことの表れだ。高齢者へのワクチン接種の進展によって、重症者は減るとみていた。
感染力が強いデルタ株への置き換わりにより、7月に入って新規感染者が増え続けても、政府・与党内では「これからは感染者数でなく重症者や死亡者数を見るべきだ」(自民党幹部)などの楽観論が支配的だった。首相も記者会見で、東京の状況に関し「人工呼吸器が必要な重症者数は1月と比較して半分。病床使用率も2割程度に抑えられている」と説明していた。
しかし、7月下旬の4連休後、さらに感染者数は急増。29日には初めて全国の新規感染者数が1万人を超えた。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は28日の段階で「医療の逼迫が既に起き始めている」と明言。デルタ株は若い人でも重症化リスクがあり、感染者が増えれば重症者も増えるのは「必然的」(中川氏)だったのだ。
◆それでも「病床は足りている」
方針転換に追い込まれても、政府内にはなお楽観論が漂う。政権幹部の一人は逼迫の理由を「軽症者や無症状者をどんどん入院させているからだ」と指摘。別の幹部は「症状に応じて回転させれば病床は足りている」と語る。
だが、新方針は運用を誤れば入院の遅れや病状の悪化を招き、患者の命の危険を高めかねない。
昨年春に厚生労働省がコロナの受診の目安を「37.5度以上の熱が4日以上」と示した際は、基準に満たない人が検査を受けられない例が続出し、軽症者が重症化したり死に至ったりすることもあった。加藤勝信官房長官は3日の記者会見で「そうした懸念も踏まえて対応していく必要がある」と強調。別の政府高官は「自宅療養者の健康観察は、保健所だけでは限界がある」と医療機関との連携強化を課題に挙げる。
政府の対応に、立憲民主党の枝野幸男代表は3日の党会合で「『自宅療養』というのは言葉だけで『自宅放棄』と言わざるを得ない。とんでもない状況が生まれている」と医療の放棄だと批判。共産党の志位和夫委員長はツイッターで「首相自身が『医療崩壊』を事実上認めた」と指摘した。
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