菅義偉首相は8日、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、東京都に4度目の緊急事態宣言を発令することを決めた。発令期間は12日から8月22日までの6週間で、23日開幕の東京五輪は緊急事態宣言下の開催となる。有観客にこだわったが、1都3県では無観客開催に追い込まれた。菅氏は会見で「緊急事態宣言の下で異例の開催」とし「大会が人の流れを引き起こし、感染拡大につながることは絶対に避けなければならない」と語気を強めた。

この日の会見でも「緊急事態宣言となれば、無観客も辞さないと申し上げてきた」と語った。しかし、自身は一貫して東京五輪・パラリンピックのフルスペック開催を主張。有観客で大会を成功させて政権を浮揚させ、総選挙勝利に結びつける青写真を描いていた。

だが、感染拡大に歯止めがかからなかった。6月7日、野党から開催是非を問われ、「国民の命と健康を守っていくのが開催の前提条件だ。これが崩れれば、行わないということだ」と初めて開催可否に触れ、同21日、「無観客も辞さない」と初めて明言。徐々に追い込まれた。

次期衆院選の前哨戦の東京都議選(4日投開票)も追い打ちとなった。大敗が予想されていた都民ファーストの会が「無観客開催」の公約で大善戦。自公で過半数割れを喫した。「世論を読み違えた」と分析した自民党内部からも「衆院選は厳しい」との声があがり、「無観客」の現実味が日に日に高まっていた。

都内の新規感染者が7日に920人となり、この日も896人と1000人台に迫り、緊急事態宣言は不可避となった。菅氏はこの日、大会の意義について「全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを東京から発信したい」と語った。思うように進まないコロナ対策。緊急事態宣言下での五輪開催。政局に発展しかねない難局のかじ取りは厳しさを増すばかりだ。【大上悟】