東京都の新型コロナウイルス新規感染者数が大きく減ったのは、感染経路や濃厚接触者を追跡して調べる「積極的疫学調査」の規模を縮小したからでは? インターネット上などで、こんな疑問が上がっている。都が追跡調査の対象を絞る方針を示してから2週間。現状を追った。(岡本太、原昌志、宮本隆康)
保健所の業務
追跡調査を縮小したため、これまで追えていた軽症者や無症状者を見逃しているのでは―。疑問は主にこうした見方に基づいている。
「データを見る限りそれはない」。都のモニタリング会議メンバーを務める国立国際医療研究センターの大曲
根拠の1つは、感染経路不明者の割合だ。追跡調査で見つかる感染者は感染経路が特定できる。その調査を縮小すれば、全体の感染者に占める不明者の割合は上がるはず。しかし都の感染者状況を分析すると、縮小通知の前後で不明者の割合は62・9%から51・3%とむしろ減少している(5日現在)。
もう一点は、無症状者の数だ。追跡調査によって確認した感染者は、自覚症状のない人が多い。調査縮小の影響が出ているなら、無症状の割合は下がる。だが感染者に占める無症状者の割合を通知前後で比べると、18・9%から23・5%(同)に上昇している。
では、調査縮小による影響がみられないのはなぜか。そもそも通知の前後で、保健所の調査方法に大きな変化はないとの声がある。複数の保健所によると、昨年12月ごろからの感染者増で、事実上追い切れないケースが続出。23区のある保健所の所長は「前から濃淡は付けている。通知によって変わったことはない。保健所によってはすでに全然やっていなかったようだ」と説明。都の職員も「通知は実態に合わせた面がある」と明かす。
そうした中で墨田区保健所は、通知後も陽性者1人ずつに詳しい調査を継続。それでも陽性者は都内全域と同じように減少しているといい、西塚至所長は「流行は抑えられているのは明らか」とみる。
本来は徹底的に追跡調査をするのに越したことはない。だが大曲医師は「保健所業務の負荷を考えると、全体的な減少傾向が続いている限りは重点化でいい。封じ込めの可能性が見えた段階で幅広い調査に戻すべきだ」と指摘している。
◆保健所の業務逼迫 昨年から課題
保健所の積極的疫学調査を巡っては、昨年の「第一波」の時点から、業務の逼迫との兼ね合いが課題になってきた。
東京都は昨年4月、感染拡大により「綿密な調査が困難」との要望書を厚生労働省に提出。同時期に厚労省は、優先順位をつけた調査を認める事務連絡を出している。
「第三波」に入った昨年11月、厚労省は最優先の調査対象を高齢者施設など「重症化リスクのある人が多数いる場所・集団」とし、縮小路線を示した。神奈川県は今年1月9日から、高齢者施設や福祉施設など以外は、原則として調査をしない大幅縮小方針を示している。
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