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Monday, October 12, 2020

新型コロナ:途上国に債務ドミノ懸念 コロナで急増、G20が救済へ - 日本経済新聞

gunbenin.blogspot.com

【ワシントン=河浪武史】新型コロナウイルスによる経済危機で、途上国の債務悪化が深刻になってきた。日米欧など20カ国・地域(G20)は、アジアなど途上国の公的債務を救済する方針だ。ただ、それで生まれた財政余力は「隠れ融資」を増やす中国への支払いに回る懸念もある。ブラジルやトルコなど債務残高の大きい新興国に危機が波及すれば、世界景気の再減速は避けられない。

コロナ危機は新興国に打撃を与えている(インドの首都ニューデリー近郊)=AP

コロナ危機は新興国に打撃を与えている(インドの首都ニューデリー近郊)=AP

ケニアはモンバサ港の運営権を失う可能性がある(モンバサ港)=ロイター

ケニアはモンバサ港の運営権を失う可能性がある(モンバサ港)=ロイター

G20は14日、テレビ電話形式で財務相・中央銀行総裁会議を開く。世界経済はコロナ危機からの持ち直しが始まったが、国際通貨基金(IMF)によると、20年の世界の公的債務残高は、約80兆ドル(約8500兆円)ある国内総生産(GDP)を初めて上回る見込みだ。コロナ対策による債務の大幅な悪化が次なる危機の火種となる。

今回の会議では、資金余力のない途上国の債務支払いの猶予をまず協議する。対象は73カ国で、パキスタンなどアジア各国と、エチオピアなどのアフリカ諸国が中心だ。既に20年末までの返済猶予を決めているが、14日には21年半ばまで、さらに繰り延べできるようにする方向で議論する。

今回対象となる73カ国の返済猶予額は、110億ドルと規模は小さい。それでもG20が最優先で協議するのは「途上国のデフォルト(債務不履行)が相次げば、次はトルコやブラジル、インドなど債務残高の大きい新興国に危機が波及する懸念がある」(国際金融筋)ためだ。

既に新興・途上国は市場の圧力を受けている。新型コロナの死者数が15万人を超えたブラジルは、通貨レアルが対ドルで年初から2割も下落。ボルソナロ政権は通貨防衛を優先せざるを得ず、コロナ危機で苦しむ低所得層への現金給付案を断念した。トルコの通貨リラも、対ドルで年初から2割下げ、外貨準備も約400億ドルと19年末比で半減した。感染拡大と景気悪化という複合危機は、新興国の債務不安を膨らませている。

IMFの分析では、新興国の債務残高はGDP比で21年に66.7%まで高まり、18年の48.9%から急増する。途上国も同49.0%と、18年比で約6ポイントも比率が高まる。新興・途上国が債務危機に陥れば、債権国である日米欧への打撃も避けられず、世界景気の持ち直しは頓挫しかねない。

債務ドミノを回避する一歩となるはずの途上国の返済猶予は、実は順調には進んでいない。G20が返済猶予の対象とした73カ国のうち、実際に繰り延べを申請したのは6割の44カ国にとどまる。債務残高が比較的多いバングラデシュやカンボジア、ケニアといった国も、債務猶予の申請を見送ったままだ。

背景にあるのは、中国が返済猶予と引き換えに天然資源や重要施設を求める「債務の罠(わな)」だ。例えばケニアは独立以来最大のインフラ事業である長距離鉄道の建設に、36億ドルを中国から借り入れた。現地メディアはデフォルトになれば、中国との契約上、東アフリカ最大規模の「モンバサ港」の運営権を譲り渡すことになると指摘する。中国に借り入れがある途上国は、簡単には返済猶予を求められない。

もちろん中国もG20も一員で、公的融資の一律の返済猶予に合意する。ただ、広域経済圏構想「一帯一路」の融資は、中国開発銀行などが担っており「公的融資ではなく民間債務というのが中国の主張」(IMF高官)だ。民間債務は現時点で返済猶予の対象外のため、G20が債務繰り延べで合意すれば、それで浮いた資金がそのまま中国への返済に充てられる可能性があるという。

G20は返済猶予の条件として、対外債務の情報開示を求めるが「中国との融資契約は秘密条項が多く、途上国は担保や金利などの条件を明かすことができない」(世銀幹部)。G20は14日の会議で、中国の国有銀行を念頭に、民間金融機関なども返済猶予に参加する枠組みづくりを協議する。

世銀首席エコノミストに就いたカーメン・ラインハート米ハーバード大教授らの試算では、中国は国営企業などを通じて2000億ドルの「隠れ融資」を新興・途上国にばらまいている。債務危機はG20合意の枠外からも発生しかねない。08年のリーマン・ショックは先進国と中国の協調で危機脱却につなげたが、今回はその分断が逆に危機を深めている。

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