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非常に強い台風10号の接近を前に、7月の熊本豪雨の被災地では、住民の早期避難を徹底しようと自治体が腐心している。特に、浸水被害でダメージを受けた自宅で生活を続ける被災者に、より安全な場所への避難などを呼び掛けるが、被災者側の事情もあり、徹底できるかは不透明だ。
県によると、2日現在、避難所で過ごす被災者1004人に対し、自宅や車など在宅避難者は、自治体が把握できているだけで560人に上る。市町村別では人吉市511人、球磨村42人、芦北町7人。在宅避難者の中には持病などを理由に、避難所に行くのを敬遠している人もいる。
人吉市上青井町の早川亘さん(86)は、妻絢子さん(82)の足腰が悪いことなどから、1階の壁と床を剥がし、柱が向きだしになった自宅2階で暮らしている。亘さんは「台風は不安だが、体が不自由だと避難所に行くのも一苦労。このまま2階で過ごすつもりです」。
人吉市上薩摩瀬町に住む女性(36)も、床上1メートル以上浸水した木造平屋の自宅で、家族5人で在宅避難を続ける。床下の一部からはカビが生え、衛生的に悪いのは分かっているが、「ペットの猫がいるため、避難所に行けない」という。台風襲来時は、元の職場の駐車スペースを借りて車中泊をするつもりだ。
人吉市防災安全課は「防災無線であえて『避難所に』とせずに、『安全な場所に避難を』と呼び掛けている。被災者自身に判断してもらうしかない」とする。
球磨村は8月30日の日曜日から防災無線で避難を呼び掛け続けている。休日に被災家屋の片付けに訪れた人たちの耳に無線が届き、周囲からも避難を促してもらう狙いだ。中渡徹防災管理官(58)は「避難所を敬遠される方もいるが、知人宅でも良いので、遅くとも6日の昼までには避難を終えてほしいと強く訴えている」と強調した。
芦北町は5日夕から町内17カ所に避難所を開設して避難を促す。防災無線に加えて消防団が各地区を回って呼び掛ける予定で、町総務課は「1階が被災して2階で暮らす被災者もいて危険。避難を徹底したい」とした。(太路秀紀、小山智史)
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