ポール・アダムズ（ロンドン）、キャロライン・デイヴィス（イスラマバード）
画像提供, Reuters
イランのホセイン・アミル・アブドラヒアン外相は、パキスタンの武装勢力ジャイシュ・アル・アドルを標的とした作戦だったと述べた。アブドラヒアン外相は同勢力を、パキスタンで活動する「イランのテロリスト集団」だとしている。
16日の攻撃を受け、パキスタン政府は自国の駐イラン大使を召還。さらに、イランの駐パキスタン大使がパキスタンに戻るのを認めない意向を示した。
イランはここ数日の間に、イラク、シリア、パキスタンと3カ国を攻撃している。
パキスタン側は、空爆は「深刻な結果」につながりかねない「違法行為」だと警告している。
しかし、スイス・ダヴォスで開かれている世界経済フォーラム（WEF）の年次総会（ダヴォス会議）で演説した、イランのアブドラヒアン外相は、標的になっているのはパキスタン国民ではなくジャイシュ・アル・アドルのメンバーだけだと主張した。
「我々はパキスタン領土にいるイラン人テロリストだけを標的にしている」
さらに、アブドラヒアン外相自らパキスタン側の交渉担当者と話をし、「我々がパキスタンとイラクの主権と領土保全を尊重することを確約した」と付け加えた。
中国は17日、パキスタンとイランに「自制」し、「緊張の激化につながるような行動を避ける」よう求めた。
中国外交部（外務省）の毛寧報道官は、同国はパキスタンとイランのことを「密接な隣国」と見ていると付け加えた。
強さを誇示か
イランはこのところ、武装勢力から攻撃を受けて死者が出ており、責任を負うべき者に復讐を果たそうとしているようだ。
地域の緊張が高まっているいま、イランは強さを誇示し、暴力行為を行った者が罰を免れることはできないということを自国民に示したがっている。
16日の攻撃は、イランと国境を接する、パキスタン南西部の広大なバルチスタン州の村を襲った。イランが標的にしていたとするジャイシュ・アル・アドルは、イラン国内とパキスタン政府軍への攻撃を行ってきたイスラム教スンニ派のバルチ民族の武装勢力。
先月にパキスタンとの国境近くのイランの町ラスクの警察署を襲撃したのは、この武装勢力だった。この事件ではイランの警官十数人が死亡した。
イランは15日、シリアと、クルド人が支配するイラク北部に弾道ミサイルを発射。過激派勢力「イスラム国（IS）」とイスラエルの対外情報機関モサドが標的だったとしている。3日のケルマンでの爆発に両者が関与していると、イランは主張している。
イランの攻撃はイラク北部イルビルの建物を直撃し、民間人4人が殺害され、6人が負傷したと地元当局は発表した。アメリカはこの攻撃を非難した。
その後、イランはシリア北西部のイドリブ県を攻撃した。同県はシリア国内に残る最後の反体制派の拠点で、290万人の避難民が暮らしている。
核保有国であるパキスタンへの攻撃は、劇的なエスカレーションといえる。パキスタンは怒りをあらわにし、攻撃は「まったく容認できない」、「この違法行為が、パキスタンとイランの間にいくつかの連絡ルートがあるにもかかわらず行われたということがさらに問題だ」との声明を出した。
パキスタンとイランは、慎重さを要するが友好的な関係を築いている。今回の攻撃はパキスタンの首相とイランの外相がダヴォス会議で面会し、両国の海軍がペルシャ湾で軍事訓練を行ったのと同じ日に起きた。
一方で、両国は長年にわたり、国境地帯で攻撃を仕掛ける武装グループをかくまっていると、互いを非難してきた。
約900キロにわたり国境を接するパキスタンとイランの安全保障は、両政府にとって長年の懸案となっている。
中東全域で緊張高まる中
イスラエルと、イランの後ろ盾を受けるイスラム組織ハマスによる、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘が昨年10月7日に始まって以降、中東全域で緊張が高まっている。こうした中、イランはパキスタンへの空爆を実施した。
イランはより広範な紛争には巻き込まれたくないと表明している。しかし、イランが主導する「抵抗の枢軸」に属する複数組織は、パレスチナ人との連帯を示すためにイスラエルとその支援国を攻撃している。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエル軍と国境をはさんで交戦している。シーア派民兵組織はイラクとシリアに展開する米軍に向けてドローン（無人機）やミサイルを使った攻撃を行っている。
紅海では、イエメンの武装組織フーシ派が船舶を攻撃している。フーシ派は、攻撃対象はイスラエルとつながりをもつ船舶か、イスラエルの港に向かっている船舶だと主張している。
からの記事と詳細 ( イラン、パキスタン領内への空爆認める パキスタンはイラン大使の入国禁止 - BBC.com )
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