Pages

Wednesday, July 12, 2023

国際機関に出身者送り込む中国「表向きの会議は英語で根回しは中国語」…標準化狙う - 読売新聞オンライン

 「我々の社会と次世代のために、通信でよりつながりやすい世界を作れると信じている」

 昨年9月29日。ルーマニアの首都ブカレストに集まった国際電気通信連合(ITU)の加盟国代表を前にして、事務総局長選で勝利した米国出身のドリーン・ボグダンマーティン氏が演説した。172票中139票を得て、ロシア出身の候補に圧勝した。

 携帯電話やインターネットを含む通信のルールづくりを行うITUでは、中国出身の趙厚麟氏が2015年から22年まで2期8年、事務総局長を務めた。中国との関係を深め、中国人職員も増えたという。

 政権への異論を封じ込めるために通信技術を駆使する権威主義国家の中国とロシア出身者が続けてトップとなれば、「強権的なインターネットの管理が拡大しかねない」(日本政府関係者)。こうした不安から日米欧が連携し、米国出身候補の勝利につなげた。

 中国出身の趙氏は事務総局長として、中国に有利な通信政策を展開したとささやかれた。19年には、中国政府系金融機関と巨大経済圏構想「一帯一路」を通じたデジタル分野の協力強化の覚書を締結した。中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)がインターネットの新たな基本技術を提案する動きもあった。

 ITUなどの国際機関の役割の一つが、国同士で異なる規格を国際的に統一する「標準化」の議論だ。アジアやアフリカに積極的に進出する中国企業の技術が通信機器の国際規格となれば、「他国はその規格に従わざるを得なくなる」(日本政府関係者)。

 各国企業の技術者らが新しい通信規格などを協議する「3GPP専門委員会」での議論は、ITUに反映されることが多い。中国はこの委員会に英語に堪能な技術者を大量に送り込んでいる。内情に詳しい関係者によると、「表向きの会議は英語だが、根回しはほとんどが中国語」という。

 中国が近年、国際機関に出身者を送り込んでいるのは、国際的な存在感を高めるとともに、標準化の主導権を握る狙いがある。日本と米国、欧州などはこうした中国の動きを警戒し、連携を強めている。

 知的財産の国際ルールづくりを行う世界知的所有権機関(WIPO)。20年の事務局長選挙でシンガポール出身候補が中国出身候補を破った。日本出身などの複数候補が出馬したが、米国が中国出身候補の当選を阻止するために一本化を調整した。

 米国のトランプ前政権で国家安全保障担当大統領副補佐官だったチャールズ・クッパーマン氏は、中国の狙いについて、「世界で支配的な国になるという目標のため、国連を利用している」と指摘する。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 国際機関に出身者送り込む中国「表向きの会議は英語で根回しは中国語」…標準化狙う - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/69JulFq

No comments:

Post a Comment