政府が提示した日本銀行の次期総裁に植田和男元審議委員を起用する国会同意人事案が10日、参院本会議で賛成多数で可決された。初の学者出身となる植田総裁が率いる新体制は、内閣の任命を経て4月9日に発足する予定だ。
9日の衆院本会議に続いて、副総裁に内田真一理事と氷見野良三前金融庁長官を充てる人事案も併せて同意された。衆参両院による採決に先立ち、2月には正副総裁候補に対する所信聴取と質疑が行われた。
来月8日に任期満了となる黒田東彦総裁の下で2013年から続く異次元緩和は、デフレ経済からの脱却に効果を上げた一方で、現在も2%の物価安定目標の達成には至らず、緩和の長期化で市場機能の低下など副作用も顕在化している。植田体制は賃上げを伴う持続的・安定的な2%実現を目指しつつ、混乱なく大規模緩和策の修正を進めていく難しいかじ取りを担うことになる。
植田氏は金融政策研究の第一人者として知られる。1998年から7年間務めた審議委員時代には、当時の速水優総裁の下で導入されたゼロ金利政策や量的緩和政策の理論的支柱となった。現在ではフォワードガイダンス(指針)として各国の中央銀行が採用する、先行きの政策運営をアナウンスして期待に働き掛ける時間軸政策の考案者でもある。
2月の所信聴取では、物価情勢の現状や先行きの見通しを踏まえれば、現在の日銀の金融政策は「適切である」と指摘。現行のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の副作用にも言及した上で、「情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切である」との見解を示した。
ブルームバーグがエコノミスト49人を対象に2月24日から3月1日まで実施した調査では、植田日銀が年内に金融引き締め方向の緩和修正に動くとの見方が8割を占めた。6月会合で実施するとの見方が41%で最多となり、新体制が初めて臨む4月27、28日の会合は20%だった。
政府との連携
岸田文雄首相は2月24日の記者会見で、国会が同意して新総裁が就任した後、「できるだけ早いタイミングでお会いをし、物価安定の下で、持続的な経済成長の実現に向けた政府と日銀の連携について確認したい」と語った。
新体制の下で政府と日銀の 共同声明の見直しが行われるかどうかも焦点の一つとなるが、植田氏は所信聴取で「現在の物価目標の表現を直ちに変える必要はない」との認識を示した。岸田首相は会見で、植田氏の発言について「特段、違和感のある内容はなかった」と述べた。
副総裁に就任する内田氏は所信聴取で、日銀が直面している課題は「副作用があるから緩和を見直すということではなく、いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくかということだ」と説明した。「これからも経済物価や市場の状況変化に適応しながら、しっかりと緩和を続けていけるようにアイデアを出していきたい」と語った。
氷見野氏は金融政策の在り方について、経済・物価の先行きには上下双方のリスクがあるとし、「シナリオをいくつも考えておきながら、状況に応じて機動的に対応していく」ことの重要性を指摘した。
両副総裁は3月20日に就任する。正副総裁の任期は5年間。最高意思決定機関である政策委員会は正副総裁のほか、審議委員6人の計9人で構成する。当面の金融政策運営の方針などを決める定例の金融政策決定会合は年8回開催され、総裁が議長を務める。
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