非正規で働く地方公務員の多くが、2022年度末に「雇い止め」に遭う恐れが出ている。20年4月に始まった人事制度で政府が雇用契約の更新を原則2回までとする方針を示したため、3年目の年度末に7割近くの自治体が職員の公募試験を実施する可能性があり、試験に受からなければ働けなくなるからだ。当事者は今月に相次いで「3年目公募問題」を訴える集会を開き、雇用の安定を求める声を上げた。(畑間香織)
関東地方の公立保育園で非正規の給食調理員を務める60代女性は「来年の雇用があるか不安」と話す。非正規は任用(契約)を1年ごとに区切る仕組みで、女性が働く自治体は再任用を2回までに制限した。既に更新を2回した女性が働き続けるには本年度末、公募試験を受けなくてはならない。
再任用の制限は「会計年度任用職員制度」と呼ばれる非正規の人事制度が20年4月に導入されたのを機に、自治体が設けた。広く人材を募るために総務省が制度のマニュアルに再任用を原則2回までとし、「公募を行うのが望ましい」との方針を示したからだ。
女性は制度導入前から更新を重ね、15年近く働く。人手が不足しても勤務年数の長い非正規がいることで、食物アレルギーに対応した給食や離乳食を段取りよく調理し、時間通りに出せていると感じる。「正規は数年で異動する。経験の長い職員が一斉にいなくなったら、誰が新しい人に仕事を教えるのか」と憤る。
本年度末に公募をかける自治体数について、総務省は取材に「調べていない」と答えた。再任用する回数の上限を聞いた制度導入時の同省調査に基づき、本紙が推計すると、全国の自治体(一部事務組合を含む)の7割近い。現役職員も公募試験に受かれば継続雇用されるが、不安は広がる。
非正規公務員の支援団体などは今月、新制度導入からの「3年目公募問題」として東京都内で集会を開催。このうち公務非正規女性全国ネットワークの瀬山紀子副代表は「年度末にかけ数十万人の雇い止めが起きる。公共サービスの重要な担い手を不安定で低賃金な仕事に固定化することは、社会と未来に大きな問題をもたらす」と訴えた。
会計年度任用職員以外も含む非正規の地方公務員は、20年時点で約69万人いる。保育士や司書、各種相談員など経験や専門知識が必要な職務を担う人が多い。民間の非正規には5年を超えて契約が更新されたときに本人が求めたら無期雇用とみなす「無期転換ルール」があるが、地方公務員には適用されない。
金沢大の早津裕貴准教授(労働法)は「公共サービスは安定的に持続した方が良い。再任用を続けている人は試験や実績の評価などの手続きを経たら、無期雇用とする仕組みを整備するべきだ」と指摘する。
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