環境保護団体グリーンピースが9月に発表した世界の自動車大手10社の脱炭素への取り組みを評価した報告書で、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの日本3社がワースト3となった。トヨタは2年連続最下位。ちょっと日本車メーカーに厳しい印象を受けるが、報告書の真意は何か。執筆メンバーの1人で気候変動・エネルギー担当のダニエル・リードさん(32)に聞いた。(特別報道部・岸本拓也)
◆「環境負荷が低いのはEV」と強調
「結論から言うと、どのメーカーの取り組みも足りていない。ゼネラル・モーターズ(GM)が2年連続トップだが、他社より少し良い程度。さらなる取り組みが必要だ」。オンライン取材でリードさんは今回の報告書をこう総括した。
昨年11月に続く第2弾となる報告書は、各社の公表資料を基に大きく3つの項目から点数化し、100点満点でランク付けした。最重点項目が「内燃機関(エンジン)車の段階的廃止」で、電気自動車(EV)や、燃料電池車(FCV)といった走行時に二酸化炭素(CO2)を出さない「ゼロ排出車」の販売比率や、ガソリン車の廃止計画の有無などを評価し、77点を配分した。その他、部品調達先にも脱炭素化を求める「サプライチェーンの脱炭素化」が18点、「資源の節約と効率化」は5点とした。
なぜEVなどを重視するのか。世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑える国際社会の約束である「1.5度目標」を達成するには「さまざまな研究からEVと、グリーン水素を利用したFCVしかない」(リードさん)と考えているからだ。「日本のように火力発電が多い国では、EVがハイブリッド車よりCO2を多く排出するという反論もあるが、最近の研究では、製造から利用、廃棄までの車の一生でみて、EVが最も環境負荷が低いことが明らかになっている」と強調する。
◆「トヨタのEV販売実績は明確に弱い」
2年連続トップとなったGMは2021年のEV販売が50万台を超え、総販売台数に占める比率が8.18%と多かったことや、原材料を脱炭素化する計画などが評価された。
一方、日本勢は日産が8位、ホンダが9位と昨年からそれぞれ順位を下げた。リードさんはその理由を「ホンダは内燃機関を40年までに終了すると表明し、昨年は高く評価した。しかしその後、具体的な進行がなかった」と説明。日産については「EVの先駆者だったが、なかなか販売比率が伸びていない」とした。
2年連続最下位のトヨタは、EV・FCVの販売比率が0.18%と最低だったことが響いた。ただ、トヨタは昨年12月、30年のEVの世界販売目標を大幅に引き上げて350万台とした。リードさんは「引き上げた目標だけを評価すると、トヨタは5位くらいになる。しかし、トヨタのEV販売実績は明確に弱い。内燃機関の廃止計画がないことも後ろ向きな印象を与える」と語った。
◆トヨタ EVだけでなく「全方位」で開発
報告書に対し、トヨタは「できる限りすぐにCO2を減らさなければならない」としつつ、「1つの選択肢だけですべての人を幸せにするのは難しい。EVをはじめ、多くの選択肢を提供する」とコメント。EVやFCVだけでなく、ハイブリッド車などを含めた「全方位」で脱炭素を進める考えで、水素エンジンや、CO2を排出しない合成燃料の研究開発にも力を入れる。
リードさんは「技術の多様性を持つという考え自体は否定しないが、現時点で選べる道は限られる」とした上で続ける。「昨年の世界のEV販売台数は前年から倍増した。EVシフトは加速しており、日本メーカーが取り残されないか心配している」
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