日本政府が2012年に尖閣諸島を国有化してから、11日で10年になった。中国は海洋進出を加速させ、海警局の船による同諸島周辺の挑発行為は常態化している。緊張緩和は見通せず、日中国交正常化50年の節目を控え、両国の関係改善に向けた動きにも影を落としている。
7月5日未明、沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島沖。同県与那国町の漁師(50)が操る「瑞宝丸」(総トン数9・7トン)が島に近づくと、闇夜に巨大な二つの船影が浮かんだ。
高級魚アカマチ(ハマダイ)を狙って漁に出た金城さんを待ち構えていたのは、数千トンクラスの中国海警船だった。領海侵入した海警船2隻は瑞宝丸を挟み撃ちし、数百メートルまで船体を寄せてきた。海上保安庁の巡視船が割って入り、「にらみ合い」が続いた。領海内の連続滞在時間は国有化以来最長の64時間17分に及んだ。
金城さんは近年、海警船につきまとわれることが多くなったと憤る。「中国は本気で尖閣を乗っ取りにきている。豊かな日本の海で、なぜ中国に気を使って漁をしなければならないのか」
松野官房長官は9日の記者会見で、7月の領海侵入に触れ、「情勢は依然予断を許さず、極めて深刻に懸念している」と語った。
尖閣諸島を巡っては12年4月、当時の石原慎太郎東京都知事が民間人の地権者から買い取る意向を表明したことを契機に、民主党の野田政権が同年9月、国有化に踏み切った。
中国側は激しく反発した。海上保安庁によると、09~11年に計1件だった中国公船の領海侵入は、12年に23件に急増。翌13年に52件と最多となり、その後も年20~30件前後で推移してきた。海警船の接続水域(領海の外側約22キロ・メートル)内の航行日数は20、21年はそれぞれ年間300日を超えた。
日本政府は海保の巡視船の増強や、南西諸島への自衛隊部隊配備などを進めるが、中国側も大幅に態勢を強化している。13年には国家海洋局など4組織を統合して海警局を発足。18年に武装警察部隊の傘下に編入した。21年には、主権が侵害されたとみなせば海警局の船舶に武器使用を認める海警法を施行し、現場の緊張感はさらに高まった。
中国は空でも動きを活発化させている。今年3月には無人偵察機が尖閣北方の日本の防空識別圏を飛行し、日本は航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)で対応した。ロシアによるウクライナ侵略後、ロシア軍との共同行動も目立つ。
日本政府は9月29日の日中国交正常化50年を控え、外相や首脳レベルの対話で緊張緩和を模索するが、見通しは不透明だ。実際、8月上旬にカンボジアで予定された日中外相会談は、米下院議長の台湾訪問などに伴い、開催が見送られた。
中国側は尖閣周辺海域の活動を継続し、既成事実を積み重ねる戦略を緩めていない。日本の外務省幹部は「緊張緩和に向けた働きかけと同時に、首脳会談など様々なレベルで両国の意思疎通を図る努力を続けるしかない」と指摘する。
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