韓国の朴振(パク・チン)外相の初来日は、日韓両政府による日程調整がぎりぎりまで行われ、難産の末に実現した。日本政府は韓国との関係改善を模索する一方で、いわゆる徴用工問題の解決に向けた道筋を韓国側が示せるのか慎重に見極めていたためだ。18日の外相会談で林芳正外相と朴氏は徴用工問題の早期解決を図る考えで一致したものの、具体策は公表されず、問題解決につながるかは不透明だ。
「エルボー、エルボー」。18日の外相会談冒頭、林氏は笑顔で朴氏に語り掛け、肘を突き合わせて写真撮影を促した。朴氏も笑みを浮かべながら写真に納まった。
日韓関係は文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で「戦後最悪」と言われるほど冷え込んだが、今年5月に発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は徴用工問題などの懸案解決に意欲を示してきた。日本側も核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対応するため、日韓関係の正常化に期待を寄せていた。
しかし、日本は関係改善を期待するたびに煮え湯を飲まされてきた経緯がある。李明博(イ・ミョンバク)元大統領は当初、日本との関係を重視する姿勢を示したが、政権末期には竹島(島根県隠岐の島町)への上陸を強行。「未来志向の日韓関係」を標榜した朴槿恵(パク・クネ)元大統領も慰安婦問題などをめぐって海外で日本を批判する「告げ口外交」を繰り返した。
今回の朴振氏の来日も当初は6月中を予定していたが、竹島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国の調査船が海洋調査を行ったことが発覚したことなどを受け、いったん見送られている。
岸田文雄首相は懸案解決のボールは韓国側にあるとのスタンスで、韓国側が強く希望する首相への表敬訪問を日程に組み込むかどうか事務方での調整では合意には至らなかった。18日の会談を終え、外務省幹部は「表敬を受けるかどうかは官邸が判断することだ」と語る。
岸田政権が慎重に対応するのは、安倍晋三元首相の死去も無関係ではない。安倍氏は保守層の支柱として政権側に影響力を及ぼしていたからだ。
政府関係者は「安倍氏が不在となった今、韓国に甘い態度を取れば保守層から一層批判を受ける。これまで以上に慎重に進めなければならない」と説明する。
外相会談で朴氏が徴用工問題をめぐり「現金化が行われる前に望ましい解決策が出るよう努力する」と述べたことに関し、政府関係者から「問題を解決しようという意志は示した」との声がある一方、議論の進展があったとは言い難い。
尹政権は官民共同の協議会を設置して対応策を検討する方針だが、原告側からの反発が強まっており、尹政権の支持率は発足2カ月で低迷。国内で合意が形成できなければ態度を急変させる可能性もあり、日本政府は警戒を維持している。(広池慶一)
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