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Sunday, May 22, 2022

ロシア軍に「責任転嫁と隠蔽」横行か…侵攻長期化、「厭戦」解消に腐心 - 読売新聞オンライン

 ロシアのウクライナ侵攻開始から3か月が近づき、プーチン政権は国民に 厭戦えんせん 気分が広がらないよう腐心している。米欧などの経済制裁により物価が上昇し、国民生活に痛みが広がってきた。政権内部では勢力バランスに変化が起きているとの見方も出ている。

 モスクワ中心部の街頭では、露軍が全域の「解放」を目指すウクライナ東部ドンバス地方の子供たちの苦境を示す写真展が開かれている。写真展は国防省系の団体が主催し、プーチン政権の主張を浸透させる狙いがある。

 年金生活者のリュドミラさん(76)は「幼い子も苦しむ原因を作ったのは、ウクライナに介入した米欧だ。軍事作戦はやむを得ない」と話した。

 独立系の世論調査機関が4月末に発表した調査結果では、ウクライナでの犠牲の原因は米国と北大西洋条約機構(NATO)にあるとの回答が57%を占めた。

 米欧の経済制裁により、モスクワのスーパーでは欧州からの輸入品が減った。タマネギやニンジンなどの野菜は1・5倍程度値上がりした。

 露統計局が発表した4月の物価状況によると、乳製品は前年同月比で約1・2倍に上昇。洗剤類や家電は同約1・3倍と、物価高は食品以外でも続いている。

 輸入販売業のラリーサさん(46)は「生活は不便になり不安も大きい。早く作戦(侵攻)は終わってほしい」と嘆いた。

 一方、プーチン氏が国内の安定維持のため重視する軍や治安機関でも地殻変動が始まっているとの指摘が出ている。

 プーチン政権を支えるオリガルヒ(新興財閥)が出資するテレビ局が5月上旬、「勝利の将軍たち」と題した番組を放映した。

 番組では、ウクライナでの軍事作戦の責任者とされる南部軍管区のアレクサンドル・ドボルニコフ司令官らと並び、「軍事機密を統括する人物」として軍参謀本部情報総局(GRU)のウラジーミル・アレクセーエフ副長官を紹介した。

 プーチン政権下では軍や治安機関の出身者が要職を占める。プーチン氏は旧ソ連の情報機関、国家保安委員会(KGB)の出身だ。

 アレクセーエフ氏の台頭は、プーチン氏がKGBの後継組織「連邦保安局」(FSB)よりも、GRUを重用し始めたことを示すとの見方が出ている。

 ただ、軍部も失敗が相次ぐ。英国防省は19日、東部ハルキウ(ハリコフ)を攻略できなかった司令官や、旗艦「モスクワ」が沈没した黒海艦隊の司令官が相次いで更迭されたと指摘し、「責任転嫁と 隠蔽いんぺい が横行している」との分析を示した。約3か月に及ぶ戦闘では、10人以上の将官が戦死したとされる。

 調査報道で知られるロシア人記者アンドレイ・ソルダトフ氏とイリーナ・ボロガン氏は内部情報に基づき、「プーチン氏が3月下旬に軍事作戦の目的を首都キーウ(キエフ)攻略から東部ドンバス地方の全域制圧に絞ったことへの不満が軍に広がっている」との分析を発表した。

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