ロシアの独立系メディアは11日、情報・治安機関の露連邦保安庁(FSB)の対外諜報(ちょうほう)部門のトップらが自宅軟禁に置かれた可能性があると報じた。侵攻を続けるウクライナでの諜報活動を担当していたといい、首都キエフ攻略などが思うように進まない中、プーチン政権が内部粛清を始めたとの見方も出ている。
FSB幹部の自宅軟禁については、ロシアの情報機関の取材を長年続けるロシア人記者が11日にSNS(ネット交流サービス)で報じ、隣国ラトビアに拠点を置く独立系ニュースサイト「メドゥーザ」などが詳しい内容を伝えている。
報道によると、自宅軟禁処分となったとみられるのはFSBの「第5局」と呼ばれる部署の局長ら。旧ソ連諸国を中心とした対外諜報活動を担当しており、容疑は資金の着服のほか、ウクライナの政治状況に関する誤った情報を報告したことが挙げられているという。
同局は侵攻直前にウクライナの政治状況をプーチン大統領に伝える役割を担っていたとみられる。この情報を報じた記者はメドゥーザに対し、「第5局は指導者を怒らせるのを恐れ、プーチン大統領が聞きたいことだけを報告していた」と指摘している。
プーチン政権はキエフを短期間で陥落させ、ゼレンスキー政権を崩壊させる「電撃戦」を狙っていたとみられるが、2月24日の侵攻から2週間以上が経過した3月12日時点でも主要都市の多くを制圧できていない。プーチン氏は侵攻2日目の2月25日にウクライナ軍に対してクーデターも呼びかけた。ロシア軍が侵攻すれば、自身が「ネオナチ」と呼ぶウクライナの現政権への国民の支持がすぐに崩れると考えていた可能性がある。
ウクライナ政府は9日、ロシア軍の将官8人前後がすでに解任されたとの見方も示している。戦況次第では、今後もさらに「粛清」が続く恐れがある。【杉尾直哉】
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