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Monday, January 31, 2022

軍の弾圧 世界に訴え ミャンマー市民2.5億のツイート分析 - 日本経済新聞

2021年2月1日に起きたミャンマー国軍のクーデターからまもなく1年。人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍の銃撃や拷問による死者数は28日時点で1499人となった。ミャンマー国民は国軍による弾圧に抵抗し、民主化を求めて活動を続けている。若者を中心とした市民が戦いの場としているのはSNS(交流サイト)だ。

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取材班は投稿件数の多いツイッターのハッシュタグ「#WhatsHappeningInMyanmar」に着目した。 クーデターの起きた21年2月1日から22年1月18日までに計2億4960万4664件の投稿があった(リツイートや返信も含む、トラック・マイ・ハッシュタグ調べ)。

1日で最も投稿件数が多かったのは21年2月20日の306万1789件だった。この前日の19日にデモ参加者に初めての犠牲者が確認された。

最多の月は21年5月で計4778万4982件。世界の各都市で国軍による弾圧を非難し、民主派勢力の「挙国一致政府(NUG)」への支持を訴えるデモが行われた「春の革命の日」があったためだと考えられる。

5月をピークに投稿は徐々に減り、10月以降は1日当たり10万~20万件台になった。

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12月5日、ヤンゴンで若者たちの小規模なデモ隊の背後から軍の車両が突っ込んだ。市民が撮影した映像がSNSで爆発的に拡散、この日の投稿は50万2275件にのぼった。

投稿によると、事件が起きたのはヤンゴン中心部に近いチーミンダイン地区。地元メディアのKhit Thit Mediaが市民から提供を受けた映像をフェイスブックに投稿している。分析してみると路上に書かれたミャンマー語「春の革命」の文字から、同地区のパンピンジー通りで撮影されたことがわかる。

拡散された映像のミャンマー語「春の革命」の文字から、ヤンゴンのチーミンダイン地区のパンピンジー通りで撮られたことがわかる

Khit Thit Mediaにフェイスブック上で取材を申し込むと、「報道している写真や映像は自分たちのジャーナリストが撮影することもあれば、市民ジャーナリストから提供されることもある」との返答だった。

ミャンマーでは14年ごろからスマートフォンが普及し、特にフェイスブックの利用率が高かった。しかし、クーデター以後はツイッターの利用者が増えている。国軍は21年2月にSNSへの接続を遮断したが、多くの市民が無料のVPN(仮想私設網)を使って規制を回避、利用を続けている。#WhatsHappeningInMyanmarで投稿している人の中には、21年2月以降にツイッターのアカウントを取得した人が多くみられた。ミャンマー語が主体、実名のフェイスブックから、英語で世界中に匿名投稿できるツイッターに切り替えたと推測される。

取材班は「#WhatsHappeningInMyanmar」のハッシュタグを使って国軍による暴力行為や市民らの抗議活動を頻繁に発信している107人に連絡を試みた。連絡が取れた52人中、20人からミャンマー国内の現状などについて質問の回答が得られた。

この107人の投稿者のうち、居住地を海外に設定している人は45人だった。本当の居場所を聞くと「ミャンマー国内」と答えてくれた人もいた。身の安全を考えてか、居住地について詳細な回答を避ける傾向が見られた。

国軍はロシアのアプリで情報発信

ミャンマー国軍が映像を投稿しているメッセージアプリの画面

フェイスブック(現メタ)は21年2月、ミャンマー国軍によるサービスの利用を禁止した。SNSに加え、同社が運営する画像共有アプリ「インスタグラム」の利用も禁止した。国軍のほか、国軍が支配するメディアなどによる利用も認めていない。さらに12月には国軍の統制下にある企業のアカウントやページを削除した。動画投稿サービス「ユーチューブ」も3月に国軍の利用を禁止した。欧米のSNSを利用できなくなった国軍は現在、ミャンマー語の広報映像をロシアの無料通信アプリ「テレグラム」に投稿している。

タンゾーダさん
ミャンマーの民主化を訴える団体RTMの代表を務めるタンゾーダさん

ヤンゴン出身 、35歳のタンゾーダさんは日本国内でミャンマーの民主化を訴える団体「Revolution Tokyo Myanmar(RTM)」の代表者だ。

「Free Free Our People(私たちの国民を解放せよ)!」

1月15日、東京都品川区の在日ミャンマー大使館前で在日ミャンマー人らによるデモが行われた。タンゾーダさんは先頭でマイク片手にシュプレヒコールをあげていた。在日ミャンマー人ら約120人が参加し、デモの様子をフェイスブックなどでライブ配信する人たちの姿もあった。

在日ミャンマー大使館前のデモで抗議の声をあげる在日ミャンマー人ら(1月15日、東京都品川区)

発足当初5~6人だったRTMのメンバーは現在約40名。フェイスブックで呼びかけ、月2回は大使館前などでデモ活動をしている。タンゾーダさんはミャンマーの現状に、「自分の子どもや孫の世代までこの政権を存続させてはだめだ」と強く思っている。娘がニュースを見ながら「帰ったら捕まっちゃうね」と言ったのを聞き、自分たちが終わらせるしかないと決意を固めた。

クーデターの約1週間後から祖国で暮らす祖母や親戚と直接の連絡はとっていない。自分とつながりがあると国軍に知られたら危険が及ぶ可能性があるためだ。「本当は心配、けど我慢しなくては」。 声を聞きたい気持ちをこらえている。

大使館前のデモでタンゾーダさんは国軍との衝突で犠牲となった人のために黙とうしようと参加者に語りかけた。参加者全員が国軍への抗議を示す3本指のポーズで静かに目を閉じた。

ソーさん(仮名)
ヤンゴンで暮らす家族を心配するソーさん

19年に来日し、清掃会社に勤務するソーさん。父親と兄弟、夫がヤンゴンにいる。夫とは日本で一緒に暮らす予定だったが、新型コロナウイルス禍で来日できなくなり2年近く会えていない。 ヤンゴンの家族とは毎日フェイスブックの通話機能を利用して話をしているという。

家族によると停電が頻繁に起こっているようで、都市部のインフラは安定していない様子だ。 「どこも戦いが多く混乱した状況だと認識している。それを聞いて自分も混乱するし心配だ」とソーさんは話す。

(データビジュアルエディター 斎藤一美、小谷裕美、石井理恵、淡嶋健人、藤井凱、松島春江)

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