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Saturday, October 23, 2021

「福徳岡ノ場」噴火、戦後最大級と判明 桜島「大正噴火」に次ぐ規模 - 毎日新聞 - 毎日新聞

小笠原諸島の海底火山・福徳岡ノ場の大規模噴火の噴煙。約90キロ離れた地点からでも、はっきり確認できる。対流圏と成層圏の境界面に達して横に広がり、一部はさらに上っている。=2021年8月13日(海上保安庁提供)
小笠原諸島の海底火山・福徳岡ノ場の大規模噴火の噴煙。約90キロ離れた地点からでも、はっきり確認できる。対流圏と成層圏の境界面に達して横に広がり、一部はさらに上っている。=2021年8月13日(海上保安庁提供)

 東京から南へ約1300キロ離れた小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」で8月に発生した噴火は、国内で戦後最大級の規模だったことが、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などの分析で判明した。噴煙の高さは海上16~19キロに達していた。かつては島だった鹿児島県・桜島が大隅(おおすみ)半島と地続きになった1914年の「大正噴火」に次ぐほどの大噴火だった。噴火で放出された大量の軽石が今月中旬から沖縄本島や奄美(あまみ)群島に漂着しているが、四国や本州への影響も懸念されるという。

 福徳岡ノ場は有史以来たびたび噴火し、新島を形成しては消滅することを繰り返してきた。今回は8月13日から15日にかけて噴火。直前の水深は25~40メートル程度だった。

 噴火後には二つの新島ができた。国土地理院によると、8月17日時点で西側に面積約0・3平方キロ(東京ドームおよそ6個分の広さ)、東側にこれより小さい島が確認された。

福徳岡ノ場の噴火によりできた新島。8月17日には括弧型の二つの新島が確認できた(左側の写真)が、10月20日には東側の新島が消滅し、西側も小さくなっていた(右側の写真)=国土地理院提供 拡大
福徳岡ノ場の噴火によりできた新島。8月17日には括弧型の二つの新島が確認できた(左側の写真)が、10月20日には東側の新島が消滅し、西側も小さくなっていた(右側の写真)=国土地理院提供

 ただ、島は崩れやすい火砕流の堆積(たいせき)物でできているとみられ、徐々に小さくなっている。10月20日時点で東側の島は波に洗われて消え、西側の島も3分の1ほどの大きさになっていた。いずれ消滅するとみられている。

 産総研の及川輝樹・主任研究員や気象庁などのチームは、気象衛星ひまわりのデータや地上から撮影された写真を基に、噴煙の高度や継続時間を分析した。その結果、大量の軽石や火山灰を放出し、噴煙が成層圏に達する「プリニー式噴火」と呼ばれる状態が、6時間半以上続いたと判断した。

日本列島で発生した主な大規模な噴火 拡大
日本列島で発生した主な大規模な噴火

 噴火の規模は噴出物の量で求められる。放出された軽石や火山灰は少なくとも約1億立方メートル(東京ドームの容積およそ80個分に相当)、最大で約5億立方メートルとみられ、0~8の数値で噴火の規模を示す「火山爆発指数」は5番目に大きい「4」と推定した。マグマの噴出量に着目して噴火の規模を表す「噴火マグニチュード」は4・5~5・1と見積もった。

福徳岡ノ場から噴出した軽石の動き 拡大
福徳岡ノ場から噴出した軽石の動き

 戦後の主な大噴火では、1990年から95年まで噴火が続いた長崎・雲仙岳の火山爆発指数は3で噴火マグニチュードは4・8、77~78年の北海道・有珠山の火山爆発指数は4だが噴火マグニチュードは4だった。いずれも今回の福徳岡ノ場の噴火が上回った。今月20日の熊本・阿蘇山の噴火と比べると、1万倍ほどの規模になるという。

 及川さんは「今回の噴火は、江戸時代(1783年)の浅間山(長野・群馬県境)の天明噴火に匹敵し、桜島の大正噴火に次ぐくらいの噴火とみられる。たまたま海上だったが、日本列島でも1世紀に数回は起こる規模の噴火だ。人が近くに住む火山でもやがて起こることを認識しておかなければならない」と話す。

沖縄県国頭村の海岸に漂着し砂浜を埋め尽くした大量の軽石。福徳岡ノ場から約2カ月かけて流れてきたとみられる=2021年10月19日(及川輝樹・産業技術総合研究所主任研究員提供) 拡大
沖縄県国頭村の海岸に漂着し砂浜を埋め尽くした大量の軽石。福徳岡ノ場から約2カ月かけて流れてきたとみられる=2021年10月19日(及川輝樹・産業技術総合研究所主任研究員提供)

 一方、1000キロ以上離れた沖縄や奄美では今回の噴火で噴出したとみられる軽石が漂着し、漁業や観光業に影響を及ぼしている。

沖縄県国頭村の漁港で船舶の周囲に滞留する軽石。福徳岡ノ場の噴火で噴出したとみられる=2021年10月20日(国頭漁業協同組合提供) 拡大
沖縄県国頭村の漁港で船舶の周囲に滞留する軽石。福徳岡ノ場の噴火で噴出したとみられる=2021年10月20日(国頭漁業協同組合提供)

 今月中旬から、沖縄本島北部と奄美群島では大量の軽石がビーチや港を埋め尽くしている。漁船は、エンジンの冷却用装置が軽石を吸い込みエンジンがオーバーヒートしてしまう恐れがあるため、出港を見合わせるケースも出ている。

沖縄県国頭村に漂着した軽石。全体的に白っぽく黒い部分も混じっている。福徳岡ノ場の噴火で噴出したとみられる=及川輝樹・産業技術総合研究所主任研究員提供 拡大
沖縄県国頭村に漂着した軽石。全体的に白っぽく黒い部分も混じっている。福徳岡ノ場の噴火で噴出したとみられる=及川輝樹・産業技術総合研究所主任研究員提供

 国頭(くにがみ)漁業協同組合(沖縄県国頭村)の村田佳久組合長は「軽石は崩れやすく、細かいものをエンジンが吸い込んでしまう。他の漁港では実際にオーバーヒートを起こした例もある。まだ沖合に帯状の軽石が漂っていて、どうなるか分からない」と話す。

 軽石は日本ではあまり産出されない「粗面岩」と呼ばれる火山岩で、化学組成は福徳岡ノ場が1986年に大規模噴火した時に回収されたものと似ているという。及川さんは10月18~19日、沖縄県北部で軽石を拾った。基本的には白っぽいが黒い部分も見られ、2種類のマグマが混ざって噴出した可能性もある。今後、詳細に分析される。

 86年の大規模噴火では、南西諸島や九州、四国などにも軽石が漂着した。今回の噴火は当時と比べても桁違いに大きく、今も漂流している軽石の塊があるため、これから黒潮に乗って四国や本州方面に向かう可能性もある。及川さんは「今後、フェリーや高速船などの海上交通や、海水を使う発電所などにも影響が及ぶ恐れがある」と対策の必要性を指摘している。【池田知広】

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