国家の関与が疑われる大規模なサイバー攻撃について、政府は、相手国を名指しして非難する「パブリック・アトリビューション」を強化している。従来は名指しを控える傾向にあったが、欧米各国と歩調を合わせ、積極姿勢に転じた。(井上宗典)
「悪意あるサイバー活動は看過できない。断固非難する」
外務省が強い言葉で中国を批判する談話を出したのは、今年7月19日。当の中国も参加する東京五輪の開幕直前というタイミングに加え、米英豪や北大西洋条約機構(NATO)などが同様の声明を同時発表するという規模の大きさに、世界が注目した。
このパブリック・アトリビューションを主導したのは米国だ。連邦捜査局(FBI)などの捜査で、中国当局とつながるハッカー集団が世界中で攻撃を行っている疑いが判明したと発表。データを人質に取って身代金を要求するウイルス「ランサムウェア」などが使われているとした。
「アトリビューション」は英語で「特定」などを意味する。捜査で突き止めたサイバー攻撃の主体を名指しし、対外的に公表する手法がパブリック・アトリビューションと呼ばれる。
警察庁幹部によると、サイバー攻撃は通常、発信元を巧妙に隠して行われ、刑事事件の摘発に至るケースはまれだ。だが、ウイルスの解析や手口の分析により、国家の関与を強く推認できることもある。
パブリック・アトリビューションはそうした場合に有効な反撃手法とされ、欧米各国が2017年頃から積極的に展開してきた。捜査能力を誇示し、攻撃の抑止につなげる狙いもある。
日本では17年と18年に1度ずつ、米国などが出した声明に合わせて外務省が北朝鮮や中国を非難したことはあった。だが、外交の手法として、相手国との関係悪化を避けようとする傾向が強く、積極的とまでは言えなかった。
政府が姿勢を転換した背景には、国際情勢の変化がある。近年、重要インフラや先端技術を狙うサイバー攻撃が激化し、安全保障上の懸念が広がっている。特に米国は同盟国や友好国とともに中国やロシアなどへの圧力を強めており、日本も歩調を合わせる必要があると判断した。
警察庁の「サイバーセキュリティ政策会議」が今年3月にまとめた報告書には「判明した手口や犯罪者の動向を積極的に発信していくべきだ」との文言が盛り込まれた。翌4月には、宇宙航空研究開発機構(
政府が9月28日に閣議決定した今後3年間の「サイバーセキュリティ戦略」でも、中国とロシア、北朝鮮を名指しし、サイバー攻撃を行っているとみられると明記している。
からの記事と詳細 ( サイバー攻撃国、日本政府が積極的な「名指し非難」に転換…北や中露を念頭 - 読売新聞 )
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