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Tuesday, October 19, 2021

米軍AIは「幼稚園レベル、技術で中国に対抗できず」…担当幹部退任で波紋 - 読売新聞

 【ワシントン=田島大志】米軍の人工知能(AI)の開発を担当する幹部がAI分野の技術革新の遅さへの不満から、「中国に対抗できない」として辞任したことが米国内で波紋を広げている。AIの軍事利用は戦場の風景を一変させ、国家間の勢力バランスをも揺るがしかねないだけに、米軍は危機感を強めている。

 「15年後、20年後の中国に対抗できるチャンスはない」。米空軍の初代最高ソフトウェア責任者を今月退任したニコラス・シャラン氏は、10日付の英紙フィナンシャル・タイムズで米軍AIの技術水準をこう指摘した。米国が劣勢に立たされる状況に耐えられず職を辞したことも明かした。

 シャラン氏は一部の米政府機関のサイバー防衛力は「幼稚園レベルだ」とも酷評した。14日にはFOXニュースにも出演し、「手遅れになる前に警報を発したかった」と語った。

 米国は民間を中心にAI分野で世界をリードする存在だ。米国防総省も2019年にAI戦略を発表し、情報分析や軍事装備への導入を進めてきた。

 昨年3月にはインド太平洋軍司令部が、衛星やレーダー、情報機関などからのデータや情報をAIを使って統合解析し、作戦や指揮に活用する実験を行ったと明らかにした。担当者は「分析官は大量の報告書を読み現象を理解しているが、連続した事象と結びつける点でAIはより早い有効な手段になる」と語る。

 米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が昨年8月に行った想定実験では、民間が開発したAI制御の航空機が空中戦でパイロットが操縦するF16戦闘機を圧倒した。

 しかし、米軍にとってAI導入推進の壁となるのが倫理面からの慎重論だ。

 軍の技術向上には、世界最先端を行く民間企業のデータ提供や技術協力が不可欠だが、企業にとっては、兵器開発への協力は消費者らの反発を招くリスクがあり、ブランドイメージにもかかわる問題だ。

 米IT大手グーグルでは2018年、従業員が軍事目的でのAI技術供与に反対運動を展開し、経営幹部が「人を傷つける目的では活用しない」と表明した。

 シャラン氏も、グーグルをはじめとする民間企業の協力が得られず、倫理を巡る論争が技術革新の足かせとなっていると指摘した。

 特にAIが自ら標的を選択し、人間の意思が介在しない状態で攻撃する「自律型致死兵器システム(LAWS)」については、「殺人ロボット」になるとの懸念があるとして、国際的にも規制の動きが広がる。

 そうした中、中国やロシアはLAWSを含めたAI技術開発に力を入れる。

 オースティン米国防長官は7月の講演で、国内の慎重論を踏まえ、「我々は競争するが、正しい方法で行う。倫理面で手を抜くことはない」と強調した。同時に「AI技術の進歩は戦いの様相を変えている。その可能性を理解しているのは中国も同じだ」と中国への対抗心をあらわにした。

 米国は今後5年でAI分野に約15億ドル(1650億円)を投資する。米英豪が9月に打ち出した安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」もAI技術での連携を柱の一つに掲げた。「他国がAIをフル活用し時代遅れになった後では、太刀打ちできなくなる」(ワシントン軍事筋)との焦りが開発競争を過熱させている。

 【北京=大木聖馬】中国の 習近平シージンピン 政権は、人工知能(AI)の軍事分野での活用は、米国との軍事力の差を乗り越える「ゲーム・チェンジャー」になるとみて、国を挙げて開発に取り組んでいる。

 習国家主席は2018年10月に開いた中国共産党政治局の集団学習会で、「AIの発展を加速させることは、世界的な科学技術競争の主導権を勝ち取るのに重要な戦略的取っかかりとなる」との認識を示し、技術開発の加速を指示した。中国軍機関紙・解放軍報も20年2月、将来の戦争で制するべきものとして、「制智権(AI化の領域を支配する力)」を挙げた。

 習政権は民間の最先端技術を軍の強化につなげる「軍民融合」を国家戦略として推進しており、AIはその重要な構成要素の一つだ。たとえば、民間で開発が進むAIによる自動車の自動運転技術などは容易に軍事転用できる。AIの安全保障分野への応用として、「情報収集、偵察」「サイバー活動」「作戦指揮」「無人兵器」などが検討されている模様だ。

 中国メディアによると、中国空軍は既にAIを用いた指揮システムを開発し、飛行機の回避行動の予測などに利用しているという。今年8月には東シナ海で中国軍による無人機の運用が確認されたが、今後はAIで無人機を自動操縦させ、沖縄県・尖閣諸島周辺の空域で偵察飛行させることや、大量の無人機を同時に飛ばして空母打撃群を攻撃する能力の取得なども目指しているとみられる。

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