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Friday, September 10, 2021

モデルナ異物混入、製造工場で部品取り付けミス2回 混入気付くも日本に連絡なく… - 東京新聞

 米モデルナ製の新型コロナワクチンから異物が見つかった問題で、製造したスペインの工場は、異物混入の原因となる製造ラインの部品取り付けミスを2回していた。初回のミスでは異物混入に気付かないまま、ワクチンを日本へ出荷。2回目のミスの後、別のロットのワクチンを製造中に異物混入に気付いたが、日本に連絡しなかった。スペインの製造ラインの管理が不十分だった可能性がある。(沢田千秋)

 国内での異物混入を受け、3つのロットのワクチンが回収中だが、既に50万回の接種が行われたとされる。スペインから連絡があれば、接種を中断できた可能性がある。問題のロットのワクチンを接種後、男性3人の死亡が報告された件について、10日の厚生労働省の専門部会は「接種との因果関係は評価できない」とした。

 厚労省や国内でのワクチン供給を担う武田薬品工業などによると、異物混入はスペインの製薬会社ロビの工場で起きた。この工場はモデルナの欧州での生産拠点。ワクチンの容器(バイアル)にゴム栓をはめる工程で、2つの金属部品を不適切に製造ラインに取り付けたため摩擦が発生し、バイアル内に金属片が入ったという。

 製造日がいつだったかは不明。ロビは取り付けミスをした後、3つのロット計16万3000本を製造し、日本に出荷した。その後、バイアルのものとみられるガラスの破損事故が起き、メンテナンスをした際に2回目の部品の取り付けミスをした。別のロットを製造中に異物混入を発見し、ミスに気付いた。このロットは出荷されなかった。

モデルナ製ワクチンから見つかった金属片。1マイクロメートルは0.001ミリメートル(武田薬品工業が厚生労働省の専門部会に提出した資料より)

モデルナ製ワクチンから見つかった金属片。1マイクロメートルは0.001ミリメートル(武田薬品工業が厚生労働省の専門部会に提出した資料より)

 厚労省の担当者は「ロビは取り付けミスが起きたのはガラス破損後と思っていたが、日本から異物の報告があり、慌てて検証したと推察される」と話す。

 武田薬品によると、異物が混入したバイアル全39本はモデルナに送り、国内にない。「モデルナとの契約で、品質情報の調査はすべてモデルナが行うことになっている」という。

 モデルナと武田薬品は共同声明で、異物は心臓の人工弁や縫合糸として体内でも使える「316ステンレススチール」で、「筋肉内に注入されても医療上のリスクが増大する可能性は低い」と説明した。

 厚労省監視指導・麻薬対策課は「医薬品医療機器法(旧薬事法)上、ワクチンの有効性、安全性に責任を負う前提で武田に販売許可を出した。現時点での対応に問題はなく、立ち入り調査などの予定はない。疑うべき点があれば適切に調査していく」としている。

◇モデルナ製ワクチン異物混入問題 8月半ば以降、5都県8カ所の接種会場で異物入りバイアル瓶39本が見つかった。全てがスペインの製薬会社が日本向けに製造した同一のロット番号。同時期に同じ製造ラインで作られた別の2ロットも含めて使用が中止され、配送済みの計162万回分が回収対象となった。

◆接種後死亡の因果関係「評価不能」と厚労省部会

厚生労働省と環境省が入る中央合同庁舎第5号館

厚生労働省と環境省が入る中央合同庁舎第5号館

 新型コロナの米モデルナ製ワクチンの異物混入問題で自主回収となったロットのワクチンを接種後に死亡した男性3人について、厚生労働省ワクチン副反応検討部会は10日、ワクチンと死亡との因果関係は「評価不能」とし、引き続き情報収集に努めるとした。現時点で同社製ワクチンの「重大な懸念は認められない」として、接種継続に問題はないと結論付けた。

 検討部会の資料によると、死亡した3人は30~49歳で、いずれも基礎疾患はなかった。1人の死因は不整脈による急性死と推測。残る2人の死因は調査中で、うち1人は心臓性急死か発熱が原因となった可能性がある。

 モデルナ製ワクチンの国内供給を担う武田薬品工業はこの日の検討部会に出席し、自主回収となったロット全てに「異物混入の可能性は十分ある」と述べた。

◆専門家はどうみる?

 米モデルナ製の新型コロナワクチンに異物が混入した問題で、識者3人に話を聞いた。

◆金属アレルギーなど健康被害ほぼない

 日本感染症学会ワクチン委員会委員長、西順一郎・鹿児島大教授
 ごく小さな316ステンレススチールなら金属アレルギーなどの健康被害はほぼない。海外製ワクチンの異物混入は過去にもあり、製薬会社が分析、調査をするのは慣例。健康被害が明らかになれば国の調査は必要だが、そうでない場合は製薬会社に任せるのが現実的な対応だ。微量の金属粒子の注射が突然死に結び付くことも医学的に考えにくい。

◆厚労省は異物入手と分析を

 サリドマイド薬害の被害者、佐藤嗣道・東京理科大准教授
 なぜ、厚生労働省がワクチン内の異物を入手し、国立医薬品食品衛生研究所で分析、同定をしないのか違和感がある。目に見える金属片が製剤に入り込むなど普通はあり得ず、製薬会社の工場全体に問題がある可能性もある。いったん全品の使用を止め、原因を明らかにすべき重大な問題。政権はワクチンを打たせたいし、企業はまずい情報を隠すことがある。薬害は行政の不作為によって起こる。

◆接種中止が理想でも感染抑制とジレンマ

 神奈川警友会けいゆう病院、菅谷憲夫医師
 ワクチンの異物は、どういう影響があるか不明なうちは接種中止が理想だ。ただ、モデルナが打てなくなれば日本は混乱する。ワクチンの効果は間違いなく、感染を抑えるため、みな一生懸命打とうとしている中、中止が正しいのかジレンマがある。各国がワクチン製薬会社に平身低頭し、売り手が強い契約も仕方がない。

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