スマホカメラは進化する過程で「デジタルカメラ」とは別方向に大きくかじを切って成功したけど、そんな中、あえてデジタルカメラとして扱える、本格的な撮影に対応できるものを作ろうというソニーらしいコンセプトで登場したのがXperia 1シリーズなのである。当初はその志に追い付けない感があったけど、目指すところがあるというのは大事で、年々着実に進化しているのだ。
今回の大きな進化は「トリプルカメラだけど実質クアッド」ってとこと、2つに分かれていたカメラアプリが統合されたこと。この2点を中心に見ていきたい。
なお、レビューでは発売前の試作機を使用している。
実質クアッドカメラのXperia 1 III
Xperia 1 IIIは見ての通り、3つのカメラを搭載している。上から順に超広角カメラ(16mm相当)、広角カメラ(24mm相当)、望遠カメラ(70mm/105mm相当)である。
この望遠カメラが新しい。これは内部に光学ズーム機構を持っており、70mm相当と105mm相当を切り替えて使うのだ。ソニーでは可変式望遠レンズと言っている。これ、ちょっと分かりづらいのだけど、70mmと105mm相当の2段階のステップズームと思っていい。使う側としては実質クアッドカメラなのだ。
では超広角から105mm相当の望遠まで順番にそのズームっぷりを見てみたい。超広角は16mm相当でF2.2。イメージセンサーは1/2.6型で1200万画素だ。これは従来と同じ。
続いて、広角カメラ。メインカメラとなるのでちょいと高性能で、レンズは24mm相当でF1.7と明るく、イメージセンサーサイズも1/1.7型とちょっと大きめで1200万画素。いまひとつカラっと晴れてくれなかったのでコントラストは低めだけど、写りはナチュラルでいい感じ。
3番目は望遠カメラの70mm相当の方。広角カメラからは2.9倍となる。イメージセンサーは1/2.9型。超広角カメラのセンサーより少し小さいが、前モデルの望遠カメラよりは少し大きくなり、画質も上がった。F値はF2.3に抑えられている。
最後は105mm相当。70mmの1.5倍であるが、最後のひと伸びって感じでうれしい。F値はF2.8と70mm相当に比べるとちょっと暗くなるけど、スペック的には悪くない。
こうなると24mmと70mmの間がちょっと離れているよね、50mm相当くらいが欲しいよね、となる。ソニー的にはそこは「AI超解像ズーム」(AIを利用して補完する)を使い、クオリティーを上げたという。そこで48mm相当(広角カメラの2.0x)で撮ってみた。
何だかんだいってディテールは少し甘くなるけど、「AI超解像」というだけあってデジタルならではの不自然な感じは軽減されている。良いことである。今後、この手のデジタルズームの技術ってすごく重要になっていくと思う。
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望遠カメラを使いこなそう
気になる望遠カメラは当然、光学式手ブレ補正付きで、Dual PD(つまり像面位相差AF)でAFも速くなった。これは期待できそう。まずは走ってくる電車を連写だ。
連写はAF/AE追従で秒20コマと超高速。ただしこれは広角カメラのみ。望遠カメラでは秒10コマとなる。ちょっと残念。で、105mm相当で連写したのがこちら。
AF-Cモードで被写体をタップしてリアルタイムトラッキングをかけてやると、きっちり追い続けてくれる。
さらに被写体ブレを防ぐためにシャッタースピード優先にして1/1000秒で撮影。
手前にかぶったワイヤにAFが引っ張られることなく、ちゃんと車体を追い続けてくれた。
ただ、ローリングシャッターのゆがみには注意。望遠カメラのセンサーはけっこう出ちゃうのだ(逆に広角カメラでは高速で動く被写体を撮ってもほとんどゆがまない)。さらに、70mm相当の望遠で撮った鶏もどうぞ。
望遠カメラはけっこう寄れるので花も撮れる。
70mm相当はポートレート撮影にもちょうどよい焦点距離だ。
センサーが小さい分、高感度時の画質はちょっと不満ではあるが、前モデルの望遠カメラより良くなっており、撮影の幅が広がったって感じ。
2つのカメラアプリが融合して使いやすくなった
もう1つのトピックはカメラアプリ。Xperia 1 IIは通常のカメラアプリと、アップデートで後から追加されたPhotography Proという2つのアプリがあり、使い分ける必要があった。カメラアプリは他のXperiaと同じ「スマホカメラ」っぽいアプリ。Photography Proは露出を自分でコントロールできる「本職カメラ」っぽいアプリだ。
ただ、カメラアプリは「動物瞳認識AFが使えない」「超高速連写が使えない」、逆にPhotography Proはスマホカメラならではの「インカメラ・ぼけ・動画」を使えないという欠点があり、使い分けが面倒だった。
Xperia 1 IIIでは両者が融合。カメラアプリは「Photography Pro」1つになり、そのBASICモードが従来の「カメラアプリ」となった。こんな感じで切り替えて使う。
操作系は変わるが、写りの差はそれほどない。
PSMの各モードでは露出補正やホワイトバランスやISO感度のマニュアル設定など細かいコントロールができる。まずはこれらのモードでいろいろ撮ってみたい。一番の特徴は、画面の右側がさまざまな撮影設定で埋まっていてシャッターボタンがないこと。
このモードのときは側面のシャッターを押すのだ。だから両手で構えないと安定しないし、縦位置で撮るときはちょっと不便。その代わり、細かいセッティングをさっと変えられるし、常に現在の設定が見えているので、カメラを知っている人には扱いやすい。
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個人的にはAF-ONボタンがいい。AF-Cモードにしてこれをタップすると、リアルタイムトラッキングAFが働きフォーカスを合わせ続けてくれるのだ。ソニーのミラーレス一眼「αシリーズ」にも「AF-ON」ボタンはついており、私もαを使うときは愛用している。これは犬の瞳にフォーカスを合わせ続けている図。
Photography Proのモードではカメラを知っている人ほど使いやすいのが特徴。例えばレンズの切り替えだ。4つの焦点距離が35mm判換算時の数値で表示され、さらにその中間に合わせたいときも、フルサイズセンサーのカメラを使っている人に分かりやすいよう、35mm判換算の焦点距離で表示してくれるのだ。
ISO感度やホワイトバランス、シャッタースピードをマニュアル設定できるのもいいところ。夕日がキレイだったので印象的に撮ろうと、ホワイトバランスを太陽光にし、マイナスの露出補正をかけて撮ってみた。
反対にBASICモードは普通にスマホカメラなので、細かいことは考えずに気楽に撮るのにいいし、スマホならではのぼけモードも使える。特に望遠でぼかすといい感じのポートレートになるのでおすすめ。傘を差しているという難しい条件だったけど、iToFが頑張ったのだろう。傘の一部がうまくに認識されないくらいで済んだ。
インカメラを使った自撮りもBASICモードオンリーだ。
ポートレートセルフィー機能で背景をぼかす&ビューティー機能で撮ってみた。
動画もBASICモードで撮る。
本格的に映像作品を撮りたいときは、「Cinema Pro」を別途起動することになる。
本職デジタルカメラらしい自然な写りに注目
では最後にそれ以外の作例を。まずは料理。これはBASICモードで撮影。料理と認識された。
続いて夜。イマドキ流行のナイトモードは持ってない。おかげで黒がぎゅっと締まった夜景らしい夜景を撮ってくれる。
さらに70mm相当で夜の公衆電話を。この望遠カメラはけっこう寄れるのでつい使ってしまう。
105mmでの望遠でも1枚。夕刻、駅を出たら巨大な虹がかかっていたので、望遠カメラにして撮ってみた。
最後は広角カメラであじさい。雨の中、実にいい感じにしっとりと撮れた。
と、Xperia 1 IIIの特徴的なところを中心に見てきたが、写りが非常にナチュラルで好感が持てるというのが一番の感想だ。イマドキのスマホカメラは強めにHDRをかけてくっきり鮮やかに仕上げる傾向があるし、その方がぱっと見てきれいに感じるのでそれが喜ばれるわけだが、Xperia 1 IIIはあえてそういう画作りは避け、作りすぎない比較的ナチュラルな写真を撮ってくれる。デジタル一眼などを使い慣れている人にはこちらの方がしっくりくるし、不自然な写真になることも少ない。
でも、αを目指すのならまだまだレベルアップできるところはあるわけで、個人的には多少カメラ部が分厚くなってもいいから、クオリティーを追求していってほしいなあと思ったりもするわけで、この先も楽しみである。
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