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Sunday, February 7, 2021

カートリッジにモーターまで内蔵したリムーバブルHDD「REV」:スイートメモリーズ File048 - Engadget 日本版

gunbenin.blogspot.com

[名称] REV
[種類] HDD
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 2.5インチ
[容量] 35~120GB
[登場年] 2004年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

「REV」は、Iomega社(アイオメガ)が開発したリムーバブルHDD。ジャンルとしては同社の開発したJazと同じですが、プラッターサイズが3.5インチから2.5インチへと小さくなっているほか、リムーバブルHDDの大敵となるホコリやチリ対策が徹底されている、というのが大きな違いです。

第1世代となる35GBは2004年4月、第2世代となる70GBは2006年8月、第3世代となる最後モデルの120GBは2008年5月に登場しています。カートリッジの形状はすべて共通となっており、35GBのディスクは70GBのREVドライブで読み書き可能、70GBのディスクは120GBのREVドライブで読み込み可能と、一部とはいえ互換性も確保されていました。

主な用途はバックアップ用で、大容量データを扱う一般ユーザーと、中小企業でのテープメディアからの置き換えがターゲット。そのため、安さと手軽さを優先していたZipとは違い、約30年という保管寿命を実現するなど、信頼性が重視されていたのが特徴です。

また、小型で軽量ということもあって耐衝撃性に優れていたこと、テープメディアと違ってランダムアクセス性に優れていたこともメリットでした。

ちなみに、カートリッジのパッケージに「35GB/90GB」と書かれているのは、実容量が35GBで圧縮時は90GB保存できるという意味。テープメディアでは圧縮時の容量も書かれていることが多かったので、それに倣ったのでしょうか。一般ユーザーから見ると、少々紛らわしい表記です。

それでは、カートリッジを細かく見ていきましょう。

表面はIomega社のロゴ、そしてREVという文字だけというシンプルなもの。この写真の上部にシャッターがあり、ここを開くことで内部のディスクへとアクセスが可能となります。カートリッジサイズは約77.5×74.5×10mm(実測)。厚みはあるものの、3.5インチのフロッピーディスクとMDの中間くらいのサイズです。

冒頭部分で「ホコリやチリ対策が徹底されている」と書きましたが、そのひとつがスピンドルモーター接続部の改善です。

一般的なリムーバブルメディアでは、ドライブ側のスピンドルモーターとカートリッジ内のディスクを物理的に接続する必要があるため、どうしても隙間ができてしまいます。この対策には、スピンドルモーターの接続部まで覆う大きなシャッターを採用する、といった方法もありますが、この方法では隙間を減らせはしても密閉することができず、ホコリの侵入を阻めません。

そこでREVは、このスピンドルモーターをカートリッジ側に内蔵。接続部そのものをなくし、そもそも隙間を作らないという手段を取りました。

裏面を見てみましょう。

3.5インチフロッピーディスクなどでは、中央にスピンドルモーターとの接続部がありますが、REVはそれが皆無。白いシールが貼られている部分にモーターが内蔵されていて、隙間がありません。

もうひとつの大きな改善点が、シャッター部分です。スライド式のシャッターは内部のディスクを保護しやすいものの、カートリッジの外装やドライブとこすれてチリが出てしまう危険があります。これを回避するため、REVは回転ドアのようなシャッターを採用しました。

このシャッターを開いてみたのが、こちらです。

中央、薄く線のようにみえるのがプラッター。その左に4つの端子が見えますが、これはモーターへとつながる配線となります。

この写真ではほとんど見えませんが、シャッターの内側にはパッキンのようなものがあり、開口部が密閉されるようになっています。さらにカートリッジ内部には、ホコリを除去するフィルター、湿度調整用の吸収剤まで内蔵されていました。

ドライブ側は、カートリッジのシャッターを開くまでドライブ内を可能な限りクリーンな環境にする構造となっていたほか、ヘッドの自動クリーニング機構を搭載するなどし、ホコリやゴミ対策を徹底。これにより、高い信頼性が実現されていました。

メディアとしてのこだわりは十分でしたが、問題は価格。REVは35GBカートリッジが登場時約8000円で、同じ金額を出せば100GB前後のHDDが買えてしまうほど高価でした。

個人ユーザー向けとして考えた場合、35GBではHDDをフルバックアップするには足らず、かといって、数GBのデータバックアップであれば安いDVD-Rで間に合ってしまうため、割高なREVを積極的に採用する理由がありません。

エンタープライズ向けとしてみると、容量こそテープメディアに見劣りしてしまいますが、約25MB/s(120GBモデルでは約35MB/s)という高速な転送速度と、ランダムアクセスも可能というのが武器。あまり大きくないデータを頻繁にバックアップしたい、トラブル時でも素早くリストアしたいという用途にはピッタリです。規模の小さなSOHOや中小企業であれば、テープメディアよりも便利に使えるシーンは少なくなかったでしょう。

ただし、通常のHDDをカートリッジ化して使えるリムーバブルキット(モバイルラック)が数千円という廉価で発売されており、汎用のHDDと組み合わせれば、安くて速くて大容量のリムーバブルHDDを簡単に作れてしまいます。信頼性の面では多少見劣りしますが、導入コストも運用コストもREVよりはるかに安く、実用性の面では明らかにこちらに軍配が上がります。

REVはカートリッジの小ささ、長期保存可能、信頼性の高さを強みとしていましたが、その強さを発揮できる用途が限られていたこともあって、広く使われることなく消えていきました。それでも2010年頃までは残っていたので、リムーバブルHDDとしては意外と長寿な方でした。

なお、カートリッジに汎用HDDや汎用インターフェースが使われておらず、ヘッドがドライブ側に搭載されている正統派リムーバブルHDDとしては、このREVが最後の製品となっています(たぶん)。


参考:

REV, Iomega, Wayback Machine
REVカタログ, Iomega, Wayback Machine
米Iomega、リムーバブルHDDストレージ「REV」を出荷開始, PC Watch

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