いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、後志の寿都町の片岡春雄町長は選定の第1段階となる「文献調査」への応募を決めたことを明らかにしました。国が2017年に調査対象になる可能性がある地域を示した全国の「科学的特性マップ」を公表して以降では初めての自治体になります。
原子力発電所の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、寿都町は8日午後、町議会の全員協議会を開き、選定の第1段階になる「文献調査」への応募について意見を交わしました。
この結果を受けて片岡春雄町長は記者会見し、「住民説明会、産業団体への説明会が終わり、私の判断として文献調査の応募を本日決意した」と述べ、文献調査への応募を決めたことを明らかにしました。
応募の理由について片岡町長は「反対の声が多く感じられるかもしれないが、多くの賛成の声も私自身に直接、相当の数がきている。そういう判断の中で私は一石を投じ、議論の輪を全国に広げたい」と説明しました。
調査に応募した場合、国が3年前の2017年に調査対象になる可能性がある地域を示した全国の「科学的特性マップ」を公表して以降、初めての自治体になります。
また、片岡町長は近くNUMO=原子力発電環境整備機構を訪れ、直接、文書を提出して調査に応募する考えも示しました。
一方、片岡町長は8日未明、自宅に火のついたものが投げ込こまれたことについて、「暴力的な行為を体験したが、このような訴えのしかたを決して許してはいけない。しっかり議論に参加してほしい」と述べました。
8日午前には同じ後志の神恵内村でも村議会の臨時の本会議で調査への応募の検討を求める請願が採択され、これを受けて高橋昌幸村長は9日、文献調査への応募を決断する見通しです。
相次ぐ自治体の応募で、長年行き詰まっていた最終処分場の選定に向けたプロセスが動き出すことになります。
片岡町長が文献調査に応募することを表明したことについて、町内で生花店を営む斉藤捷司(78)さんは「“核”をとるか“過疎”をとるかなら“核”だと考えているので、町長の判断に賛成だ。素晴らしい町長で120点だ」と評価しました。
その上で「商工業者は町の人口が増えないと経営は苦しく、専門家が安全だというのなら、過疎を止めるために『核のごみ』を持ってきてもよいと思っている。今は文献調査に応募する段階なので、話が進んだらまた考えたらよい」と話していました。
【官房長官“政府としてありがたい”】
加藤官房長官は午後の記者会見で、「高レベル放射性廃棄物の最終処分は将来に先送りすることなく、社会全体で必ず解決していかなければならない重要な課題で、前向きな議論をいただき政府としてありがたいと思う。今後、経済産業省がそれぞれの町村とよく相談しながら、適切に対応していくと認識している」と述べました。
その上で「処分場の選定で、国が一方的に名指しすることで、地域の理解を得られるものではない。どういう形で地域の中に合意形成を図るかについては地方自治体の判断に委ねられており、調査の段階ごとに声を聞かせていただきながら適切に対応していきたい」と述べました。
一方、処分を実施する国の認可法人、NUMO=原子力発電環境整備機構は「まだ応募を受けておらず、現段階ではコメントを差し控えたい」としています。
【調査応募の背景】
寿都町が応募に踏み切った背景には厳しい財政状況があります。
今年度の一般会計およそ52億円の歳入のうち、町税は2億円余りにとどまっています。
一方で、町で取り組んできた風力発電による売電収入が2億円以上と町税と並ぶ額に上っているほか、ふるさと納税に伴う収入がおよそ10億円に及び、貴重な財源になってきました。
しかし、今後、風力で発電した電気の買い取り額の低下が見込まれるなどとして、町は5年後から大幅な財源不足に陥るとの試算を明らかにしています。
このため、調査の応募によって得られる最大20億円の交付金は大きな魅力でした。
さらに町が取り組む洋上風力発電の誘致にプラスに働くのではないかというねらいもあります。
町では新たな財源として洋上風力発電の誘致に期待し、国から「促進区域」の指定を受けることを目指していますが、メドは立っていません。
片岡町長はNHKが入手した町議会の会合の議事録で、「資源エネルギー庁の官僚をくすぐる」などとして、最終処分場の調査と引き換えに国の指定を得たいというねらいを見せていたことが明らかになりました。
これについて片岡町長は「洋上風力発電は北海道は完全に遅れていて、勝ち取ろうとするのは当たり前だ。その1つの材料として国が困っている『核』の部分もテーブルに浮上させましょうということ。『何が悪いんですか』と私は思う」と説明しました。
今回の調査への応募は交付金を得るとともに洋上風力発電の誘致も実現させて、町の財政の安定化につなげようという「奇策」とも言えるものでした。
【鈴木知事の対応は】
道は平成12年(2000年)、道北の幌延町に高レベル放射性廃棄物の処分技術の研究施設を受け入れるにあたり、研究は認めるものの「高レベル放射性廃棄物は受け入れがたい」などとした条例を定めています。
このため今回の調査への応募の動きに対し、道は一貫して条例を順守し、慎重に対応するよう求めてきました。
寿都町の検討が明らかになると、鈴木知事は「全国の核のごみが集まる入口に立つ可能性があり、無害化まで将来10万年にわたり影響を受けるかもしれない」として懸念を表明。自治体の応募による選定プロセスについても「国が『最大20億円渡しますよ』と、頬を札束ではたくようなやり方で手を挙げさせるのはどうなのか」と述べ、反発しました。
さらに、鈴木知事は第2段階にあたる「概要調査」に移る場合は、法律に定められた手続きに基づいて反対する考えを表明し、町の動きを強くけん制。先月3日には片岡町長と直接会談し、応募は条例の制定趣旨と相いれないとして、慎重な判断を求めました。
続いて検討の動きが明らかになった神恵内村に対しても、道は重ねて慎重な対応を求め、今月7日には鈴木知事が高橋昌幸村長と会談して改めて条例を順守し、慎重に判断するよう理解を求めました。
一方、道議会は今月2日、「立場の異なる関係者の意見がぶつかり、地域に修復困難な亀裂をもたらすことが懸念される」として、冷静かつ透明性の高い議論を求めるとした決議を全会一致で可決しました。
ただ、自民党会派の中には調査への応募を水面下で後押しする動きもあり、今後、鈴木知事や応募に反対する会派との間で立場の違いが表面化する可能性もあります。
【反対する住民団体は】
最終処分場の選定をめぐって調査への応募の動きが明らかになったことを受けて、寿都町では先月10日、応募に反対する住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が設立されました。
団体では町に対し、▼応募への賛否を問う住民投票を行うこと、▼有権者だけでなく小中学校や高校での説明会や意見聴取も行うこと、▼町議会や住民説明会を報道関係者など町民以外にも公開することなどを求めました。
さらにメンバーは住民説明会などの場で応募に反対した上で住民投票を求める意見を繰り返し訴えましたが、片岡春雄町長は「肌感覚では賛成が多い」などとして、あくまでみずからが応募を判断する姿勢を崩しませんでした。
このため団体では住民投票を実施する条例の制定を目指して、町内の有権者50分の1以上の署名を集め、7日に町に提出しました。
それでも片岡町長は町議会で条例案を審議する前に調査への応募を決めたため、団体は激しく反発しています。
住民団体の共同代表の1人、吉野寿彦さん(60)は「町長のこれまでの住民に対する態度を見ていると住民の意見を無視し続けていたので、応募を決めたのは想定内だ。交付金をもらっても町にとっては『輸血』にしかならず、町自体が変わらないと意味がない」と批判しました。
その上で「今後、他のメンバーとも協議して、町長の暴走をどうやってとめるか検討していきたい」と話していました。
"ニュース" - Google ニュース
October 08, 2020 at 01:33AM
https://ift.tt/2SDTlNJ
寿都町が「文献調査」応募決める|NHK 北海道のニュース - nhk.or.jp
"ニュース" - Google ニュース
https://ift.tt/2XYQe37
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment