沖電気工業(沖電気)は2020年4月14日、東京大学、三菱電機と共同開発した「PON(Passive Optical Network)通信リソース管理、制御技術」による、光アクセスネットワークの仮想化制御試験に成功したと発表した。
第5世代移動通信システム(5G)の普及が進む中、大容量化や多数同時接続、低遅延化といったIoT(モノのインターネット)サービスに対する多様な要求に応えるには、大量の通信リソースを消費する。そのため、多大なネットワーク設備、運用コストが必要になる。この課題解決に期待されているのが、サービスに合わせて通信リソースを管理、提供する「ネットワークスライス関連技術」だ。
PONは光アクセスネットワークにおいて、収容局と加入者をつなぐ光ファイバーを分岐し、時間多重によって収容局と加入者を1対多数で結ぶネットワーク構成だ。複数の加入者が収容局の設備と光ファイバーを共用できるため、ネットワーク設備コストを抑えられる。
沖電気、東京大学、三菱電機は、2017年に総務省から受託した「IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の研究開発」に取り組んできた。
東京大学は光アクセスネットワークのみを制御する、PONドメインオーケストレータの開発を担当。多様な光アクセスサービスをより効率的に収容可能になった。
三菱電機は、データ転送の遅延度でクラスを分類し、クラスごとに算出した通信速度や稼働持続性能から、ネットワーク構築時に最適な通信リソースを割り当てるアルゴリズムを開発した。また、親局と複数の子局を結ぶPONリンクごとの通信リソースを管理し、スライス(分割された)ネットワークにどのPONリンクを利用するか選択して、スライスネットワークを高効率で収容するアルゴリズムも開発した。
沖電気は、時間と波長の帯域を割り当てるTWDM-PONシステムを基に、要求に応じてPONのハードウェア機能を切り出し合成するリソース割り当て技術と、切り出して合成されたネットワークの独立性を確保する帯域割り当て技術(vOLT)を開発。さらに、業界団体のOpen Networking Foundationが開発した、制御簡素化装置「VOLTHA」を踏まえて、PON仮想化を可能にした。
これらの成果となるリソース割り当て試験を、試験用プラットフォームにて実施したところ、柔軟に仮想的なPONが構築できることを実証できた。これにより、通信事業者は、通信要件が異なるさまざまなIoTサービスに応じた光アクセスネットワークを、IoTサービス事業者に提供できるようになる。
なお、今回開発した技術は、開発とともに国際標準化の手続きも進められた。「ITU-T SG13」にて光アクセスネットワークを仮想化するアーキテクチャの勧告化を完了しており、インタフェースは「ITU-T SG15」での勧告化を進めている。
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