2020年05月22日07時08分
次期検事総長の最有力候補と目された黒川弘務東京高検検事長が21日、緊急事態宣言下の「賭けマージャン」を認め、辞表を提出した。異例の定年延長から4カ月足らず。黒川氏を「必要不可欠」の人材と主張し、定年延長を正当化してきた安倍政権にとって手痛い失点だ。「安倍1強」と呼ばれた政治基盤は大きく揺らいでいる。
安倍晋三首相は21日、記者団に対し、黒川氏の定年を延長した判断について自身の「責任」を認め、「批判は真摯(しんし)に受け止めたい」と語った。
政府は今国会に、内閣の判断で検察幹部の定年を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法改正案を提出。これが世論の激しい反発を受け、秋の臨時国会へ先送りを決めたばかりだった。自民党内からは「官邸が週刊文春の動きを知って採決を避けた」(ベテラン)との観測も出ている。
黒川氏が旧知の記者らとマージャン卓を囲んだのは5月1日と13日。新型コロナウイルス感染拡大は続いており、東京都では1日に165人、13日に10人の感染者を確認。政府は「不要不急の外出」自粛を呼び掛けていた。
文春は20日に電子版でこの内容を報道。当初は「賭けをしていた証拠はない」と黒川氏をかばった政権幹部も、与党内から公然と辞任論が沸き起こると「辞任やむなし」の判断に傾いた。
黒川氏は首相官邸の信任が厚く、1月末に半年間の勤務延長が閣議決定された。検察官の定年延長は初。「不当な人事介入」と批判され、以降、黒川氏をめぐる問題は政権の頭痛の種だった。
それだけに今回の辞任で幕引きを図りたい考え。首相は記者団に「定年延長は厳正なプロセスを経て法務省から請議が出された」とも強調。自民党の森山裕国対委員長は「その時点で知り得た情報で判断しており、適切だった」と擁護した。
◇官邸に稲田総長責任論
首相官邸内には「黒川氏の任命責任は検察側にある」として、稲田伸夫検事総長の責任を問う声もある。だが、検察トップに露骨に圧力をかけるなら、検察サイドの反発は必至。自民党ベテランは「腹を決めて抵抗するだろう」と混乱を懸念する。菅義偉官房長官に近い河井克行前法相夫妻が絡む公職選挙法違反事件の裁判が続いているため、「意趣返し」の疑念も招きかねない。
黒川氏をかばい続けた安倍政権に対し、ある法務省関係者は「黒川氏を辞めさせるなら、もっと早く決断してほしかった」と恨み節を口にした。「無理を重ねてきたものが崩れていく。官邸は相当、追い詰められている」。首相と距離を置く自民党の閣僚経験者はこう指摘した。
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May 21, 2020 at 03:13PM
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揺らぐ政権基盤 「不可欠」人材の醜聞直撃―検事長辞任 - 時事通信ニュース
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