原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日、記者会見を開き選定調査の第1段階となる文献調査を受け入れる意向を表明した。調査受け入れは全国3例目で、原発立地自治体では初めて。
町内には九州電力玄海原発が立地。今年に入って町飲食業組合など町内3団体から「最終処分場は新たな産業振興策の選択肢の一つ」「高レベル放射性廃棄物の発生原因を有する自治体の責務として国に協力すべきだ」などと、調査受け入れを求める請願が町議会に提出されていた。町議会は4月26日の本会議で、請願を賛成多数で採択。経済産業省は5月1日に町に対し文献調査実施を申し入れた。
脇山町長は過去の議会答弁で調査受け入れに慎重な姿勢を示していたが、町議会の請願採択を受け「住民の代表である議会の採択は重い」と言及。7日の斎藤健経産相との面会では「大変悩んでいる」と吐露する一方、「最終処分場は大事な問題だ」と語っていた。
最終処分場は、原発の使用済み核燃料を再処理した後に出る廃液をガラスで固めた高レベル放射性廃棄物について、地下300メートル超の地中に閉じ込める施設。廃棄物の放射線量が、人が近づいても安全なレベルに低減するまで数万年以上かかるとされる。
処分場選定は①文献調査(2年程度)②概要調査(4年程度)③精密調査(14年程度)――の3段階を経て決まる。文献調査実施で国から最大20億円、概要調査に進むとさらに最大70億円が交付される。概要調査以降は、知事の同意も必要となるが、佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は「新たな負担を受け入れる考えはない」としている。
選定を進める原子力発電環境整備機構(NUMO)は2002年から調査を受け入れる自治体を募り、複数から候補地を絞りたい考えだが、これまで調査を受け入れたのは、いずれも北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村のみ。長崎県対馬市では23年、市議会が調査受け入れを求める請願を採択したが、市長が受け入れ拒否を表明した。【五十嵐隆浩、森永亨】
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