<政治とカネ考> 元自治省選挙部長・片木淳さん
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。
かたぎ・じゅん 1947年、大阪府生まれ。71年に自治省(現総務省)入省。大阪府総務部長、自治省選挙部長、総務省消防庁次長などを経て、2003~18年に早稲田大公共経営研究科教授。17年に弁護士登録。
―政治資金規正法は一時しのぎの改正が繰り返されてきた。
「近年、政治が民意を反映していないのではという疑いがあったところに今回の問題が起き、政治不信は極まった。日本の政治がこの危機を乗り切るためにも、この際、抜本的な改革を行うべきだ」
―具体的には。
「企業・団体によるパーティー券購入や、政党への献金を禁止するべきだ。私が自治省選挙部長として携わった1999年の改正で、政治団体に対する企業献金は禁じたが、政党に対しては残すことになった。個人献金や政党財政の状況が残す理由とされたが、政党財政については94年の政治改革で政党交付金が創設されている」
◆投票権をもたない企業・団体の献金は適切と思えない
―なぜ禁じるべきなのか。
「96年の最高裁判決で、献金は投票の自由と表裏の関係にあり、(団体の)会員の自由な判断に基づくべきだとされている。そもそも個人と違って投票権をもたない企業・団体が献金で政治に影響を及ぼすこと自体、適切とも思えない。企業は献金の見返りを株主に説明する必要があるが、見返りを追求すれば買収に限りなく近づく」
―経団連は自民党への企業献金を「社会貢献」と主張している。
「社会貢献なら、特定の政党に出すのではなく、全ての政党に寄付すべきだ。経団連も廃止の検討を提言し、94年から10年ほど企業献金のあっせんを中止した」
―政治家の収支報告書が、資金管理団体や政党支部などで複数の種類があることにも問題がある。
「一人の政治家のカネの流れは、その関係団体を全部集めて見なければ、全貌が明らかにならない。透明性を高めるには、それが簡単にできる制度にした方がいいが、法を改正するのは規制される国会議員自身なので、なかなか進まない」
◆新人の当選を困難にする公職選挙法の見直しも必要
―他に改革すべき点は。
「候補者の行動を細かく制限する公職選挙法の見直しも必要だ。政治活動と選挙活動の境があいまいな点など、制限が選挙運動を萎縮させ、新人の当選を困難にしている。有権者の関心もこれでは高まらない。選挙期間中の運動費は独立した収支報告をさせているが、選挙運動の規制を撤廃すれば、政治資金一本で規制できる」
―派閥の見直しは。
「必要だ。カネとポストの配分に便利だからと集まっているのが派閥の現状で、今回の問題の根底にある。日本にはドイツのような『政党法』がなく、政党助成法などで政党を定義しているだけだ。派閥解消の延長として内部統制を規定した政党法をつくるのも改革の一案ではないか」(聞き手・大杉はるか)=随時掲載します
政治資金規正法 1948年施行。民主政治の発達を目的に、政治家や政党の政治資金の収支公開や寄付などについて定める。収支報告書は政党や政党支部、政治家の資金管理団体、派閥や後援会などの政治団体が作成し、毎年公表する。リクルート事件(88年発覚)を受けた94年の改正で政治家個人に対する企業・団体献金は禁じられたが、政党や、政治家が代表を務める支部は対象外とされ、抜け穴として残った。パーティー券購入は寄付には当たらず、1回150万円まで可能。20万円を超える購入者の名前は公表される。
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