山口県教委は6日、安倍晋三元首相の国葬に際し、県立学校61校に「国葬当日は半旗掲揚とする」などと求めた通知について「職務命令だった」とし、正当な理由なく従わなかった場合は処分の対象になるとの見解を示した。各校の対応は調査しないため実際に処分する可能性は低いが、学校側からは戸惑いの声が上がっている。識者は「命令は法律上の権限を越えている」と批判する。
見解は6日、安倍氏の県民葬(15日)などに反対する市民団体との意見交換の場で、教職員課の副課長らが課の考えとして示した。副課長らは「県教委は施設の管理機関で、県教委が施設管理者に指示できる。お願いではなく命令だ。旗をどうするか(の権限)は県教育長にある」「校長に弔意を表せというものではない。業務として、半旗掲揚の作業をしてもらうということだ」などと述べた。
その後の取材で教職員課は、学校教育法に基づき、施設管理の一環で半旗掲揚を指示したと説明。担当職員は「半旗掲揚という作業を指示したのであって、内心の自由に踏み込んだものではない」とした。
国葬が行われた9月27日、毎日新聞の取材では少なくとも61校中28校が半旗を掲揚。取材で確認できた限り、2校が校長の判断で掲揚を見送っていた。ある県立学校の校長は県教委の見解に対し「現場では命令という受け取り方はしていなかった」と困惑している。
「管理権をはるかに越えた拡大解釈」
早稲田大の喜多明人名誉教授(教育学)は「学校教育法で設置者に認められた『管理権』をはるかに越えた拡大解釈だ。政治的に中立であるべき教育委員会が、政治的議論の一方に加担する指示を出すべきではない。国民の間で議論があった半旗掲揚について『作業を指示した』とする主張には無理がある」と指摘する。【山本泰久、堀菜菜子、福原英信】
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