公費で支給される政務活動費(政活費)を巡り、兵庫県尼崎市議の疑惑が深まっている。市議は会計資料の一部を偽造したことを認めたものの、「私的流用はない」として辞職勧告に応じていない。しかし、市議が政活費を管理する会派の口座から現金を引き出し、しばらく後に戻すという不可解な処理を約1年前から繰り返していたことが判明。説明に多くの矛盾も見えてきた。市議が動かした総額約700万円のカネを追った。
渦中の人物は市議3期目の光本圭佑氏(42)。2013年に初当選し、15年6月以降、大半の期間を市議会の会派「日本維新の会」幹事長として、会派に支給される政活費を差配した。
政活費は政策立案の経費として議員報酬とは別に支給され、尼崎市の場合は月10万円。半年に1回、会派の口座に所属議員分がまとめて振り込まれる。使途については領収書などを添付し、年度ごとに議長に事後報告する。使わなかった分は返還を求められる。
「会派が割れそうなので一時避難」
問題が表面化したのは22年6月。同年4月20日、10人が所属する維新会派の口座に振り込まれた半年分の政活費600万円の処理がきっかけだった。
会派などによると、その日のうちに250万円が出金され、光本氏名義の口座に移された。出金は1回25万円で計10回。市議会事務局が不審に感じて会派に問い合わせると、事務職員は「光本氏から指示を受けた」と答えたという。
6月6日、事態を把握した会派の安浪順一団長がいったん立て替えて口座に戻した。団長によると、光本氏がその後、250万円を団長に返金したという。
光本氏は報道陣に「尼崎市長選を巡り、会派が割れそうだったので、少数派が取りっぱぐれないように一時避難させた」と説明したが、この言い分は合理性を欠く。政活費は議員数の変動に応じて市から交付されるため、会派が割れても議員同士で政活費をやりとりすることはない。
会派が口座を調べると、不透明な出金はこれにとどまらなかった。
21年6月、光本氏はパソコンや周辺機器を購入する名目で、会派の口座から75万円を出金。9カ月後の22年3月、同額を口座に戻した。光本氏は会派の調査に「電器店に現金を先に支払ったが、店が商品をそろえられず、契約をキャンセルした。店側が失念していたため、返金が遅れた」と説明した。
食い違う証言 架空の見積書
ところが、店側は会派の調査に「実際は現金を受け取っていない」と証言していたことが毎日新聞の取材で判明した。
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