日本の探査機はやぶさ2が持ち帰った小惑星リュウグウの試料を詳しく分析した結果、生命の源となるアミノ酸23種類を検出したと岡山大などの研究チームが10日、正式に発表した。また、試料が含む金属粒子の並び方が整然としていることなどから、リュウグウの起源は従来の説と異なり、氷が主な成分の「氷天体」とみられることも分かったという。地球生命の誕生の謎や太陽系の成り立ちの解明が大きく進みそうだ。
見つかったアミノ酸は、構造がわずかに異なる「異性体」も含めて23種類。体内のエネルギー生産に関わるアスパラギン酸、食物のうま味成分のグルタミン酸のほか、体内で作れないバリンやロイシンなど、生物のタンパク質合成に必要なアミノ酸を含んでいた。
生命に欠かせないアミノ酸の起源は、46億年前に誕生してから地球で起きたさまざまな現象による化学反応で作られたという説と、宇宙から飛来した隕石(いんせき)などに付着して到来したという説があり、今回の発見は後者の説の補強となる。
また、試料を電子顕微鏡などで観察した結果、体積に占める隙間の割合を示す空隙率(くうげきりつ)が約50%のスカスカの構造で、そこに含まれる磁鉄鉱(じてっこう)の粒子が、まるで大きさごとに整理したように分かれて分布していることが判明した。リュウグウはこれまで、天体同士が衝突して細かい破片となり、それが引き付け合って集まり形成されたと考えられてきたが、この考え方では説明がつかない構造という。
そのため研究チームは、リュウグウの起源は大量の氷からなり、有機物や金属を豊富に含む大きさ数十キロの氷天体が起源だとする新説を提唱した。
氷天体は原始太陽系の外縁部の軌道にあり、太陽系の形成から260万年後以降に他の天体との衝突などで破壊。太陽の引力で太陽に近い軌道に移動し、氷を主成分とする大きさ数キロの核を持つ彗星(すいせい)になった。この核の氷が太陽熱で蒸発してなくなり、残った物質でできたのが、リュウグウをはじめとする有機物や水が豊富で空隙の多い低密度の小惑星だとしている。
氷天体の内部では、アルミニウムの原子核が崩壊してマグネシウムに変化する現象が起き、その際に生じたエネルギーでいったん高熱となり、エネルギーを使い切って再び冷えたとみられている。
チームによると、試料で観察された整然と並ぶ磁鉄鉱粒子は、氷天体が熱せられて冷える過程で、氷と水の境界部分で少しずつ生成され、この並び方になったという。アミノ酸も、温度変化で起きた多様な化学反応で生じたとみている。また、氷天体の氷を除いた部分の空隙率は30~60%で、リュウグウの試料の空隙率約50%と矛盾しない。
岡山大の中村栄三・特任教授は「リュウグウをはじめとした炭素系の物質を主成分とする炭素質小惑星の起源は、いずれも氷天体だとみられる。仮説の正しさを証明するため、リュウグウの試料をさらに詳しく分析したい」と話している。
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