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Friday, May 13, 2022

集団墓地で発見した夫の遺体、顔に激しい暴行の跡「何が起きたか子供に言えない」 - 読売新聞オンライン

 【ブチャ(ウクライナ中部)=上地洋実】ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャ。12日夕、真新しい十字架が並ぶ墓地で、マリーナ・コストゥシェビチさん(35)が立ち尽くしていた。45歳で亡くなった自営業の夫ルスラン・チトルさんの墓に向かい、泣いていた。

 侵攻開始からまもなく。ロシア軍が攻め入ってきた時に、コストゥシェビチさんは長男(13)、長女(4)と近くの母親宅にいた。チトルさんと離ればなれとなり、3月4日を最後に電話での連絡も取れなくなった。

 チトルさんが見つかったのは4月30日。ロシア軍が遺体を埋めた集団墓地だった。掘り起こした夫の顔には激しい暴行の跡があった。

 「2人の子供に、何があったのか今も伝えられずにいる。なぜ夫がこんな残虐な殺され方をしなければならなかったのか」。ブチャでは400人超の市民が殺害されたとみられている。

 【ブチャ(ウクライナ中部)=竹内駿平、笹子美奈子】ロシア軍の撤退から1か月が過ぎても、首都キーウ(キエフ)近郊ブチャには、いたるところに激しい戦闘の爪痕が残る。虐殺により400人超が死亡したとされる街で、市民の負った心の傷は計り知れない。

 約3万7000人が暮らしていたブチャの中心部ヤブロンスカ通り。3月末のロシア軍撤退後、多くの市民の遺体が見つかり、「死の通り」とも呼ばれるようになった。

 12日夕、その一角に立つ家の前で、ルドミラ・キジロワさん(67)は、いつものように庭で摘んだ赤い花を置き、血の痕が残る石畳を何度もなでた。「かわいそうに。かわいそうに」

 ロシア軍とウクライナ軍との間で激しい攻防が続いていた3月4日。自宅の地下室に夫バレリさん(69)と避難していたキジロワさんは、窓ガラスの割れる音を耳にした。「様子を見てくる」。バレリさんが地下室を出て数分後、今度は銃声が聞こえた。

 驚いて階段を駆け上がると、ロシア兵が下りてきた。「戻って座れ!」。地下室に留め置かれた。

 ロシア兵の姿が消えた、その日の夜。外に出て、懐中電灯を手に自宅の周りを歩くと、花壇の脇でバレリさんが倒れていた。頭を撃たれていた。体を揺すると、大量の血が手についた。

 ブチャで共に育ち、幼なじみだった2人。キジロワさんが19歳の時に結婚し、1男1女をもうけた。バレリさんは隣町でスーパーとカフェを経営。近所付き合いも良く、自慢の夫だった。子どもも自立し、緑豊かなブチャでの生活は幸せだったが、侵攻が全てを壊した。

 「こんなことが起きていいわけがない。ただただ兵士が憎い。戦争が憎い」。その声は悲痛だった。

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