専門家らで構成する東京都の防災会議地震部会(部会長=平田直・東京大学名誉教授)は25日、首都直下地震の新たな被害想定を公表した。最も被害の大きい「都心南部直下地震」は23区の約6割で震度6強以上に達し、死者は最大6148人、帰宅困難者は452万5949人と想定。タワーマンション増加など、社会インフラの変化に合わせた被害イメージも示した。
都が想定を公表するのは東日本大震災翌年の2012年以来、10年ぶり。前回想定で被害が最大だった「東京湾北部地震」から対象を見直した。耐震・免震構造の建物の増加などで前回想定より被害規模は小さくなるとして、想定上の最大数値は前回想定と比べて死者が3400人、帰宅困難者は64万人減少するとみている。
震源によって直下型地震(マグニチュード7程度)、海溝型地震(M8~9程度)のタイプ別に被害想定をまとめた。都内で最大の被害が想定される23区を震源とする都心南部直下地震が冬の夕方、風速8メートルの状況下で起きた場合の死者は3600人が地震の揺れ、2400人は火災が原因とみている。建物被害が大きい足立区の死者が795人と都内の市区町村別で最多となる可能性がある。
建物被害の見通しは19万4000棟。9万3000人とみる負傷者のうち、1万3000人が重傷者とみる。帰宅困難者が最大となるのは発災が昼の場合だが、高齢化や遠距離通勤の減少などを背景に人数は前回想定(516万人)を下回った。避難者は299万人(前回は338万人)と想定している。
東京23区で津波が最大となるのは海溝型地震で、高さは最大3メートル弱。河川敷などの浸水にとどまり住宅地への被害はないという。今後発生が懸念されている「南海トラフ巨大地震」でも都内の震度はほぼ5強以下で、揺れによる被害も限定的とみている。
数値化できない影響を「発災直後」「1カ月後」などの時系列で整理し、避難生活の長期化などの影響をまとめた「災害シナリオ」も初めて示した。たとえばスマートフォンのバッテリー切れや通信の集中で安否確認や一時避難が困難になったり、高層マンションの増加でエレベーターやトイレ利用の停止が長期化したりするケースを想定する。
被害想定上も、都心南部直下地震の際に停止するエレベーターの台数は2万2000台超と前回想定の3倍に拡大する見通し。地震が夏場に発生した場合、空調が停止し体調が悪化するなどのリスクもあるとする。身近な被害のイメージを例示することで都民や事業者が自身の生活スタイルに沿った対策を立てやすくする狙い。
防災会議は今後の防災・減災対策により被害を軽減できる可能性にも言及した。建て替えなどにより住宅の耐震化率が上がれば、1981年基準の「新耐震基準」100%を達成した場合で揺れによる死者数は約6割減る見通し。通電の復旧時などに火災を防ぐ対策を徹底すれば、火災による死者数は約7割減らす効果が見込めるという。
都は今回の想定を基に地域防災計画を修正し、22年度内に素案をまとめる。
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