新型コロナウイルス患者の入院対象を重症者らに限定する政府方針に対して4日、与野党から撤回を求める声が一斉に上がった。病床
◆首相「国民の命守る」と強弁
「デルタ株は大変な脅威だ。入院しなければならない人が入院できる対応ということを理解してほしい」
田村憲久厚生労働相は4日の衆院厚労委員会で、入院制限は必要な措置だと強調した。
もともと、ワクチン接種が進んで感染状況が落ち着けば、コロナ患者も季節性インフルエンザのように自宅療養を基本にするというのが政府の既定路線。暮らしや経済を日常に近づけるためで、官邸幹部は「患者の多くは若い人だから、中等症は入院させるという今までとは考え方を変えないといけない」と指摘する。
だが今回の入院制限は、甘い想定で病床逼迫の恐れが強まったためという正反対の理由だ。東京などでは、既に入院を希望しても待たされるケースが続出し、さらに増えることも予想されるが、菅義偉首相は4日、記者団に「国民の命と健康を守る、必要な医療を受けられるようにするため決定した」と強弁した。
◆「対応が後手」「相談なく困惑」
デルタ株は昨年から各国で警戒の必要性が叫ばれており、衆院厚労委で立憲民主党の中島克仁氏は「専門家は再三、警鐘を鳴らしてきた。対応が後手後手だ」と批判。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も「病院か自宅かの二者択一では絶対にだめだ」と訴え、主に中等症向けの宿泊療養施設の強化など、すぐに医療に結びつく仕組みの充実が必要だと力説した。
「現実には東京の問題なのに、全国一律に発信したことは大きな間違いだ。一切(事前の)相談がなく官邸が決めたことで、困惑している」
政府の入院制限に対し、自民党は党会合で撤回を求めることを決め、内容を記者団に説明した古川俊治参院議員はそう強調した。
衆院厚労委では、公明党の高木美智代氏が撤回を含めた見直しを要求。立民、共産、国民民主3党も撤回を求めることで一致し、与野党の足並みがそろう異例の展開となった。
◆衆院選を控えて強まるいら立ち
失策続きともいえる政府のコロナ対策に、与党はいら立ちを強めている。西村康稔経済再生担当相が先月、酒の提供を続ける飲食店に金融機関や酒類販売業者を通じて「圧力」をかける考えを明らかにした際には、業界団体からの突き上げを受けた自民党が見直しを要求。発表から1週間もたたず、全面的に撤回させた経緯がある。
秋までに行われる衆院選を控え、世論の動向に神経をとがらせる与党は、政策決定への関与を強化。先月末、コロナ対策の情報共有を目的に政府との新たな連絡会議を設置した。だが、今回も「病床のオペレーション(運用)の話だから」(田村氏)との理由で尾身氏らにも相談せず、政府の独断専行に与党の不満は高まるばかりだ。
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