15日、デモ隊と衝突する警官隊(バンコク)=AP
【バンコク=村松洋兵】タイ政府は15日早朝、首都バンコクの首相府前で起きた反体制デモに対して、非常事態宣言に基づく集会禁止の緊急措置でリーダーら約20人を逮捕した。けが人の有無などは不明。デモ隊が反発を強めるのは必至だ。15日午後もバンコク中心部で集会を計画している。
プラユット首相は15日午前4時(日本時間同6時)、バンコクで5人以上の集会を禁じる緊急措置を発表した。これを受け警官隊が首相府前を占拠していたデモ隊のリーダーらを逮捕した。その後、集会は解散した。
14日に始まったデモは複数の学生グループなどが合同で主催した。軍政の流れをくむプラユット政権の退陣や王室改革を求め、王宮に近い民主記念塔から約2キロメートル離れた首相府まで行進した。地元メディアによると約1万人が参加した。
15日、路上に座り込むデモ隊(バンコク)=ロイター
デモ隊は一時、ワチラロンコン国王の息子であるティーパンコン王子と、スティダー王妃が乗った車列の進行を妨げた。王室に対する不敬罪があるタイでは異例の事態だ。これに対しプラユット首相は「平和的な集会ではない。効果的かつタイムリーに事態を解決する措置を取る必要がある」とする声明を出した。
タイ政府は3月末に新型コロナウイルス対応の非常事態宣言を出したが、集会は認めていた。緊急措置はバンコクで集会を禁じるとともに、国家の安全を脅かす恐れのあるニュースの公開やSNS(交流サイト)への投稿も禁止した。
デモ隊の排除に投入された警官隊(15日、バンコク)=ロイター
タイでは2014年に軍事クーデターを起こし権力を握ったプラユット氏が19年の民政復帰に向けた総選挙後も首相を続けており、学生らは「独裁者」と批判している。
7月以降に活発になったデモは当初、プラユット政権の退陣と、国軍の権力維持を可能にしている憲法改正を主に訴えていたが、絶対的権威を持つ王室の改革に要求を広げた。王室の政治関与をなくすことや不敬罪の撤廃を求めている。
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