政府の観光支援事業「Go To トラベル」の方針変更や新型コロナウイルス感染症への対策を巡り、安倍晋三首相が説明を十分に尽くさない状況が続いている。政策転換の大きな節目があっても首相記者会見は1カ月以上開かれない。通常国会が6月17日に閉幕した後、野党の閉会中審査への出席要求にも応じていない。野党だけでなく与党からも、首相に積極的な発信を求める声が出ている。 (妹尾聡太、大野暢子)
◆公の場で語ったのは党役員会のみ
首相は21日の自民党役員会で「Go To」に関して「夏休みシーズンの観光客の足が遠のくことは、観光産業にとって死活問題になりかねない。予定通り実施することとした上で、やむを得ず東京発着の旅行は対象から除外とした」と話した。
この日、首相が「Go To」について公の場で語ったのは役員会だけ。東京を対象外とした科学的な根拠や、一転してキャンセル料を補償することになった経緯などを首相が直接、国民に説明しないまま、事業が始まる。
◆閉会中審査も出席せず
6月18日の記者会見以降、新型コロナの感染拡大への対応や政府の重要政策について、首相が発信する機会は極めて少ない。
7月14日には、官邸を出る際に「Go To」について記者団に問われ「国土交通相が対応した通り」などと回答。16日も「専門家の議論を踏まえて実施していきたい」などと話しただけで、追加の質問には答えずに立ち去った。
国会にも出席していない。政府・与党は、野党の通常国会の会期延長要求に応じず閉会させた。首相が矢面に立つのを避ける狙いだ。閉会後、衆参両院は週1回ずつ閉会中審査を開いて新型コロナ対応などを議論しているものの、野党が求める首相の出席は、与党の反対で実現していない。
◆「説明を放棄」野党が非難
立憲民主党の福山哲郎幹事長は21日に「記者会見をせず、国会にも全く出てきていない。説明を放棄しているようだ」と非難。「国会に出てこないなら首相の職を辞してもらいたい。そうでないなら1日も早く首相出席の予算委を開き『Go To』混乱の責任をどう取るか説明すべきだ」と訴えた。
立民の逢坂誠二政調会長も「やはり国会を開くべきだ」と、野党各党で臨時国会開催を求める考えを示した。
◆与党・公明党からも注文
与党・公明党の山口那津男代表からも「可能な限り、首相として国民に伝わるような発信を心がけてもらいたい」と注文が付いた。菅義偉官房長官は記者会見で「これまで(新型コロナの)対策本部や会見などを通じて説明している」と釈明。今後の発信については「適切な機会に丁寧に説明をしていく」と述べるにとどめた。
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